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二度と起こしてはならぬ 玉木利枝子さん 沖縄戦体験、南風原で講演


二度と起こしてはならぬ 玉木利枝子さん 沖縄戦体験、南風原で講演 玉木利枝子さんの戦争体験に耳を傾けるピースウォーキング参加者=11日、南風原文化センター
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄戦を知るピースウォーキング(同実行委員会主催)が11日、南風原町の南風原文化センターホールで開かれた。これまでは県内の戦跡を巡ることで沖縄戦について学ぶフィールドワークが主だったが、今回は体験者から戦時中の話を直接聞く場が設けられた。
 今年90歳になる玉木利枝子さんは、10歳のときに沖縄戦を体験した。家族や親戚らと共に南部の激戦地を逃げ回ったが、祖父母や兄らが次々と砲弾の犠牲になり、ついにはたった1人で戦場に放り出されることとなった。終戦後は収容所に送られた。現在は語り部として県内の子どもらに自らの体験を話すことで、戦争の悲惨さや平和の大切さを次の世代に伝えている。
 講演の中で玉木さんは「逃げている間に多くの親戚や友人を失った。幼なじみの少年が目の前で砲弾を受けて命を落としたときには、絶望で言葉を失った」と述べるなど、砲弾の中を逃げ惑う道中の出来事や家族と死別した当時の状況などについて細部まで具体的に語り、約60人の参加者の中には涙ぐむ人もいた。
 那覇市から訪れた40代の男性=自営業=は「爆撃のときに目と耳を覆う様子や、ガマの爆撃音、収容所での消毒液の匂いなど、その場にいた人でなければわからないことまで全て聞くことができ、心が揺さぶられた」と感想を述べた。
 玉木さんは「戦時中、壕に身を潜めながら、少しでも楽に死ぬことばかりを考えていた。銃弾が頭に命中して即死した祖母の遺体を見て、苦しまずに死ぬことができてうらやましいと思った」と振り返り「10歳の子どもでもそのように考えてしまう戦争は、悲惨だ」と語った。講話の中で「多くの命が犠牲になる凄惨(せいさん)な戦争を二度と起こしてはならない」と繰り返した。 (普天間伊織)