1734年の琉球王国時代に三司官だった蔡温を批判したなどとして、6月26日に文学者の平敷屋朝敏や友寄親方安乗ら15人が処刑された「落書事件(平敷屋・友寄事件)」から今年で290年を迎える。
事件の全貌は今なお明らかになっていないが、平敷屋、友寄らの子孫らは29日、処刑が行われたとされる那覇市安謝の恵比寿神社で合同慰霊祭を開催する。
落書事件で処刑された15人のうち名前が分かっているのは5人のみで、平敷屋、友寄の他には親泊直増、朝敏の弟の禰覇朝謫(ねはちょうたく)、屋良宣蕃がいる。子孫らでつくる合同慰霊祭実行委員会によると、親泊と禰覇の子孫はまだ見付けられておらず、実行委員会が現在探している。実行委は「朝敏らは、薩摩の圧政に苦しむ庶民を助けるために行動を起こしたと思われる。親泊や禰覇の子孫などは名乗り出てほしい」と呼びかける。
落書事件は王府の正史とされる「中山世譜」や「球陽」に記録されず、残る10人の名前も公表されていない謎多き事件。薩摩による冊封貿易の独占状態や過重な年貢による搾取など困窮を極めた庶民の暮らしぶりが事件の背景にあったとされる。
実行委員会共同代表の一人、島袋現市さん(80)は友寄安乗の本家(むーとぅやー)筋に当たる。島袋さんは「5人に貼られた『悪逆無道』のレッテルを変え、慰霊祭を通じて5人の御霊(みたま)が安らかに眠ることを祈願したい」と語った。
慰霊祭は午後1時から。一般参加は可能だが、資料代などとして1000円を徴収する。問い合わせや子孫に関する情報提供は東武事務局長、電話090(2718)3779。
(吉田健一)