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沖縄の味、移住地名物に 「アンティクーチョ」 豊見城出身・金城さん発案 牛串焼きの沖縄風天ぷら


沖縄の味、移住地名物に 「アンティクーチョ」 豊見城出身・金城さん発案 牛串焼きの沖縄風天ぷら アンティクーチョを手に持つ金城ヤス子さんと、ひ孫の金城夏希さん=オキナワ移住地の金城文房具屋
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ボリビア・オキナワ移住地の琉球通りにある金城文房具屋。店内から漂う香ばしい匂いは、肉の串焼きを沖縄県民のソウルフードである天ぷらにした地産名物の「アンティクーチョ」だ。豊見城村出身の金城ヤス子さん(79)=旧姓・比嘉=が広めた名物である。
 1944年に豊見城村で生まれたヤス子さん。豊見城中学を卒業した60年4月に琉球政府計画の第10次移民として家族と一緒に船に乗った。当時を「水がなくて大変だった。生活のために何かをしないといけないと必死だった」と振り返る。
 結婚した夫・金城成一さんの親からお店を引き継いだ後、今の金城文房具屋がある場所に息子の剛さんが家を買い、店を広げた。
 ペルーやチリなど南米では、牛肉の串焼きがアンティクーチョとして親しまれているが、オキナワ移住地では天ぷらにするのが一般的。「生活を支えるために生まれた」という、沖縄で育ったヤス子さんならではの発想だった。
 「オキナワ移住地に行くと、絶対にアンティクーチョを食べないと」と言われるほど観光客からも人気が高い。今ではオキナワ移住地の地産名物となり、アンティクーチョを広めたとして2016年にオキナワ村長から表彰を受けた。いつもくしゃっとした笑顔を見せるヤス子さん。コロナ禍以降は、営んできたお店を息子夫婦に任せた。
 沖縄の芸能が大好きで「沖縄芸能のイベントがあると誰よりも早く来場して一番いい席で見る」と話す。現在の楽しみは三線の練習と、孫やひ孫たちの元気いっぱいのエイサーと手踊りを見ること。いつも手元にある三線はボリビア移住後に初めて習った。「1日でも早くうまくなりたい。三線の音色は移住者の支えだった」と、なくてはならない存在だ。(安里三奈美通信員)