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解放叫ぶ「オガリ像」読谷でよみがえる 金城実さんが大阪の被差別部落住民と共同製作 沖縄


解放叫ぶ「オガリ像」読谷でよみがえる 金城実さんが大阪の被差別部落住民と共同製作 沖縄 アトリエの隣へ設置予定の「解放へのオガリ像」と彫刻家の金城実さん。右後方が設置予定の土台=8日、読谷村儀間
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 【読谷】読谷村の彫刻家金城実さん(85)が大阪の被差別部落に住み、住民と共同制作し、長年現地に置かれた母子像「解放へのオガリ像」が、6月中にも村儀間のアトリエ横に設置され、6年ぶりに甦(よみがえ)る。2人の子を抱き、世の不条理に拳を突き上げる母親の姿は、立ち上がれば高さ8メートル。金城さんは「花やチョウや裸体の彫刻だけ作っていれば問題ないんだけど、権力に抵抗するんだよ。それは誇り高いということだ」と一貫して流れる自身のテーマを託す。

 オガリ像は住民と一緒に粘土をこねるなどし1977年に完成させた。大阪市の市民交流センターすみよし北(旧住吉解放会館)の3階から5階の壁面に設置されていたが、2018年の会館解体に伴い沖縄に移送された。金城さんは「あんな重たい物、お金もかかるし」と思っていたというが、「金城実を支える会」代表の服部良一さん(74)らの思いにも支えられ船で沖縄に移送された。

 教員をしながら住んだ大阪で、被差別部落の住民や在日朝鮮人と出会ってきた金城さん。オガリ像は、大阪市住吉区の脳性まひの男の子とその母がモデルだという。女性や労働者など弱者の悲しみを表現したドイツ人の版画家・彫刻家のケーテ・コルヴィッツの版画「種を粉に挽(ひ)いてはならない」から着想を得た。

 「オガリ」とは被差別部落の言葉で「叫ぶ」の意味。タイトルにこの言葉を選んだ際は、住民から「挑発的ではないか」などと議論になった。浜比嘉島出身の金城さんは、自身が島から具志川や首里に出た際に感じた言語的なコンプレックスを振り返り、「あえて差別の歴史を根底に置いて、被差別部落の言葉を使いたかった」と語る。

 学生時代からの付き合いという服部さんは「沖縄を原点としながら、広く平和や差別の歴史に取り組み、創作している人はなかなかいない、非常に貴重な存在」と話す。金城さんのアトリエを整備して、沖縄にとどまらない人権へのまなざしを持つ作品や資料を見やすく整理し、沖縄や読谷で平和を学ぶコースの一つにしてほしい、と取り組む。

 秋には大阪で共同制作に関わった住民らも招きお披露目会を開く予定。支える会は、オガリ像設置やアトリエ整備に向けた寄付を募っている。目標は1100万円。郵便振替口座00990-1-82466「金城実事務局」。連絡先は金城実を支える会、電話072(626)4501。 (石井恭子)