那覇市の大名児童館2階にある音楽スタジオは、軽音楽部に所属する高校生らの練習拠点だ。昨年、がんで亡くなった音楽愛好家Sさんの、コレクションの楽器が寄贈された。9月1日には学生たちの企画で、楽器の寄贈に感謝するイベント「大名音楽まつり」が開かれた。寄贈された楽器はエレキギターやアコースティックギターなど約30台。楽器を使ったワークショップや、生バンドの演奏が披露された。
Sさんは大学時代にバンドを組み、その後もライブハウスでセッションをしてきた音楽愛好家で、楽器を集めるのも趣味だったという。Sさんと親交のあった那覇市若狭公民館館長の宮城潤さんは約2年前、「将来的に管理できなくなったら、いい形で生かしてくれる所はないか」とSさんから相談を受け、学生たちのバンド活動などを支援する大名児童館館長の屋宜貢さんを紹介した。
Sさんのおいの又吉一也さんらが、自宅に保管されていた楽器を児童館へ運び終えた日に、Sさんは息を引き取ったという。
大名音楽まつりに訪れた又吉さんは「本人の夢がかなったと思う。夢に向かって活動する子どもたちに使われることで、さらに夢を応援しているはずだ」と目を細める。屋宜さんは「Sさんの託した思いを受け取って、楽器をオープンに貸し出す。寄贈された楽器はプロのミュージシャンが驚くくらいの楽器。良い楽器に触れるのはとても大事だ」と話す。
音楽まつりのライブでは、全国高校生アマチュアバンド選手権「ティーンズロック2024グランプリファイナルinひたちなか」のグランプリ受賞を経て、「ロック・イン・ジャパン」の舞台に立った首里高校の3人組バンド「クロムレイリー」も出演した。ギター・ボーカルの新里桃花さんはSさんのギターを手に、亡くなった祖母を思って作った「十字路」などを歌った。桃花さんは「『十字路』はSさんを重ねて歌った。すごくきれいに保管されていたので弾きやすい。楽器愛のある方だったんだなと感じた」と振り返った。
(田中芳)