サッカーの第102回全国高校選手権県大会は11日、南風原町の黄金森公園陸上競技場で名護と那覇西が決勝で激突した。互いに無得点のまま、延長でも決着がつかず、名護がPK戦の末に4―3で那覇西を退けて初優勝を飾った。パスをつないで優位に試合を進めたのは那覇西だったが、名護の堅守に阻まれ、0―0のまま延長戦を終えた。PK戦は那覇西の3選手がゴール枠を外す波乱があり、名護が4―3で制した。名護は全国選手権(12月28日~2024年1月8日、東京・国立競技場ほか)に県代表として出場する。
名護が初優勝をつかんで新たな歴史を刻んだ。攻められても攻められても粘り強く守り、2回戦から準決勝まで4点差以上で勝ち上がってきた那覇西を無得点に封じた。
5バックで対応し、センターバック2人を中心に体を張ってゴールを許さなかった。延長では足のけいれんで動けなくなる選手が続出した。大城蒼央は「ボールを持っている選手に誰か一人が必ず行くと確認していた。一対一は負けないという気持ちで守った」と作戦を最後まで貫いた。
桃原泰空(やすたか)は「一番警戒していたのは頭山。パスが渡ろうとする瞬間から狙いにいった」と相手エースをつぶしにかかった。
ゴールを固める一方、攻撃は左の仲村光羽(こうは)、中央の比嘉秀彩、右の松田淳人とFW陣に託す形でカウンターを狙った。無得点に終わったが、決勝までに8得点を挙げた1年の仲村は、ボールを奪ってからの速いドリブルと早い段階でクロスを放り込む技術が光った。比嘉も内への切り込みやシュートで少ないチャンスを狙った。
GKの松瀬真之介主将は「ノーシードだろうと優勝できることを証明することができた。全国では、那覇西やコザ、宜野湾などそれぞれのチームの思いを背負って最後まで諦めない姿勢で戦いたい」と健闘を誓った。
(大城三太)
相手の5バック崩せず 那覇西、2年連続決勝敗退
3年連続で全国切符を逃した那覇西イレブンのショックは大きかった。2年連続で決勝PK戦敗退の現実を突き付けられ、選手らはうなだれた。
持ち前のパスサッカーで両サイドを切り崩しながら攻め、幾度もゴール目前まで迫ったが、5バックで守備を固めた名護のゴールを最後までこじ開けることができなかった。
FW玉城寿翔は泣き崩れたまま立つことができず、支えを必要とした。同じFW頭山亮太は目を真っ赤に腫らし、「自分の実力不足」と一人沈んでいた。昨年は決勝で感情を爆発させ、監督らとぶつかる場面もあったが、今年はピッチ内外で冷静さを貫いた。副主将を任され、チームをまとめていく自覚が生まれた。「去年決勝で負け、二度と悔しい思いはしたくなかった。支えてきてくれた親に申し訳ない」とからした声を絞り出した。
山川輝(あきら)主将は「試合に出場できないメンバーの気持ちも背負って戦った。こんな結果になって悔しい」と視線を落とした。最後はしっかりと前を見据えた上で「自分たちは3年間、一度も全国に行けなかったが、一緒にプレーしてくれたみんなに今までありがとうと言いたい」と感謝し、後輩たちに向け「絶対王者と言われるように強くなってほしい」と思いを託した。
(大城三太)
要所で好セーブ GK松瀬、獅子奮迅の活躍
GKで主将の松瀬真之介が獅子奮迅の活躍で名護を初優勝へと導いた。準決勝同様に、PK戦で決勝点を挙げて全国切符をつかんだ。GKとして名護の堅守を支え、要所でファインセーブが光った。前半はフリーキックをセーブし、後半にはスルーパスで抜け出した選手を前に出て捉えて封じた。「得意な分野」と、ほとんどのコーナーキックでボールを直接キャッチし、チャンスの芽を摘んだ。
PK戦では強心臓ぶりも発揮した。本来は7人目として蹴る予定だったが、那覇西の選手が外した後にチームと相談し、自ら蹴ると申し出た。「コースは決めていた。あとは枠を外さないように、読まれても止められないスピードで蹴った」と6人目で勝負に終止符を打った。
(大城三太)