3月1日は県立高校の卒業式。全国の大舞台で活躍した高校生アスリートの中には、卒業後も競技を続け、さらなるレベルアップを図る選手がいる。2023年の全国総体で男子400メートルを制し、短距離種目で県勢男子初となる全国総体優勝を果たした平川慧(きら)(コザ3年)は、東洋大に進学する。「勝つ厳しさも負ける大切さも知れた3年間だった」と高校生活を振り返りながら、大学、そしてその先に見据える世界へ走り始める。
■意味のある負け
あげな中3年の時にジュニアオリンピックカップ全国中学生陸上競技大会の男子400メートルで優勝、県中学記録も樹立。コザ高に進学し、1年生の時に北信越総体で3位となり、一気にその名は全国にとどろいた。
全国総体400メートルで県勢の優勝がないことを知った平川は「自分が達成するしかない」と覚悟を決めた。だが、2年の四国総体は予選で敗退。「勝つのが当たり前という感じで、気づかないうちにプレッシャーがあった」と振り返る。勝ち続ける厳しさを知った大会で「もう一度、挑戦者の気持ちになれた。意味のある負けだった」
■高校王者へ
2年の全国総体での悔しさは平川を成長させた。22年10月のジュニアオリンピックカップでは、U18の300メートルで32秒85の日本高校最高記録を出して2連覇。3年になると全国出場がかかる南九州大会は400メートルで3連覇、200メートルでも2連覇を果たした。全国総体では200メートルの県記録更新を狙い、体への負担を考え、200メートルだけに絞ることも考えた。それでも「最後の全国総体だったので後悔したくなかった」と2種目の出場を決めた。
迎えた北海道での全国総体では記録を求めた200メートルは疲れもあって6位に終わり、県記録更新とはならなかった。一方、400メートルでは自身の持つ県記録を更新する46秒63で圧勝した。
衝撃の全国デビューの1年、辛酸をなめた2年。そして、頂点をつかんだ3年。平川は「すごいストーリー性ありますよね。最後の全国総体は他の選手よりかける思いが強いのを感じていた」とそれぞれの時の思いをかみしめるように振り返った。
■環境変え、その先へ
23年10月に太ももの肉離れを起こしてしまい、現在は長い距離は走れていないが、調子は上向いてきている。競技を続ける平川は、日本人で初めて100メートル9秒台を記録した桐生祥秀や、県出身で走り幅跳びの津波響樹ら五輪代表を輩出している東洋大を進学先に選んだ。
2月中旬には施設見学もかねて練習に参加した。質が高く追い付けなかったという。それでも「新しい環境でまた挑戦者としてやっていく」と目を輝かせる。「陸上をやっているからには目指したい」と、いずれは五輪や世界陸上に出場することを思い描く。世界を舞台に、沖縄の陸上界に新たな歴史を刻み続けることを誓う。
(屋嘉部長将)