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【こんな人】創部3年目で頂点に導く エナジック・神谷嘉宗監督 貫いた「ノーサイン野球」 沖縄


【こんな人】創部3年目で頂点に導く エナジック・神谷嘉宗監督 貫いた「ノーサイン野球」 沖縄 エナジックの神谷嘉宗監督=10日、沖縄セルラースタジアム那覇(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 渡真利 優人

 青のメガホンを手に打席に視線を送る。優勝が決まった瞬間、一斉にベンチから走り出した選手たちを笑顔で見つめた。第71回県高校野球春季大会で、創部3年目のエナジックを初優勝に導いた。「大変うれしい」と朗らかな表情を見せる。

 宮崎県の都城東高から監督をスタートし、八重山、前原、中部商を歴任。赴任先の野球部を強豪チームへと育て上げてきた。2008年には浦添商を夏の甲子園出場に導き、4強入りを果たした。11年から21年7月まで美里工の監督を務めたのち、同年8月にエナジックの監督に就任した。

 今大会では、1回戦から決勝まで指示を出さない「ノーサイン野球」を貫いた。模範となったのは東亜大監督だった中野泰造さんだ。奈良県の公立高校で野球部監督を務めた中野さんは「ノーサイン野球」を実践し、東亜大在任時には明治神宮大会を3度制した。

 美里工から東亜大に進学し、現在エナジックの野球部長を務める教え子の神田大輝さんからノウハウを聞き、自らの指導にも取り入れた。「なぜこのプレーをしたのか、選手が自ら話し合い分析する。そこにノーサイン野球の意義がある」

 選手たちの自主性を尊重する。成功と失敗を重ねることで、自分たちの野球をする力「野球脳」を育てたいとの思いがある。

 信念は「凡事徹底」。「あいさつや整理整頓といった当たり前のことを当たり前にできることで真の人間性を養うことができる」。野球では、「疾風迅雷」をモットーに機動力のあるチーム作りを掲げる。「嵐のようにグラウンドを駆け回るプレーを目指したい」。教え子たちの喜ぶ姿を見守り、柔和な表情を見せた。読谷村出身。68歳。

 (渡真利優人)