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【総評】沖縄県春季高校野球 エナジック「ノーサイン野球」象徴した自主性 興南はエース不在で粘り


【総評】沖縄県春季高校野球 エナジック「ノーサイン野球」象徴した自主性 興南はエース不在で粘り 初優勝し、ダイヤモンドを一周するエナジックナイン=10日、沖縄セルラースタジアム那覇(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 名波 一樹

 第71回沖縄県高校野球春季大会(県高野連主催、琉球新報社共催)は3月20日から4月10日にかけて、沖縄セルラースタジアム那覇などで行われ、エナジックが初優勝を飾った。同校は第154回九州地区大会(20~25日、佐賀県)に出場し、21日に明豊(大分)と対戦する。新基準バットが導入されるなど新たな動きもあった今大会を振り返る。

エナジック、光る機動力

 創部3年目のエナジックは、昨春覇者のウェルネス沖縄、昨秋2位の沖縄尚学、昨秋王者の興南と強豪校を破り、ノーシードから頂点まで勝ち上がった。持ち味の機動力に加え、監督が指示を出さない「ノーサイン野球」で力を発揮した。打率4割7分6厘の1番・イーマン琉海(るかい)を先頭に置き、犠打や盗塁などを自主的に判断した。決勝も盗塁でつくった好機が勝利を引き寄せた。チーム打率は3割2分6厘(全6試合)。四球は28(平均4・7)と選球眼も上々で、5割3分2厘の出塁率をマーク。1試合平均盗塁数は4・5で、過去3年(21~23年)の同大会決勝進出校で最も高い。

 エースの古波蔵虹太は130キロ台後半の直球に、スライダーやフォークなどを織り交ぜ、防御率は1・01。準決勝、決勝と無失点で切り抜けた。

興南投手、要所締める

 準優勝の興南は投手陣の粘投が光った。昨秋のエース格が欠場する中、存在感を示したのは新2年生の左腕・比嘉澄久だ。昨秋はけがで出られず、春に向け調整を続けた。チーム最多の投球回数で防御率は1・62。140キロ超の速球で三振を奪った。金城勇希や仲間駿ら先輩投手も要所を締めた。

 打率は3割4分3厘(全5試合)で、1番仲田陽がここぞの場面で打つ勝負強さを発揮。決勝は3打数2安打、打率は大会を通し5割の成績だった。一方でチームの残塁は平均9で、決勝は打線がつながらず苦しい戦いを強いられた。

 4強入りした宜野座は準決勝で興南に1―2で敗れたが、逆転まであと一歩まで追い詰めた。ウェルネス沖縄は初戦でシードの具志川商を破り、3回戦敗退の昨秋から大きく成長した。

新基準バット導入

 3月の選抜大会と県春季大会から低反発の新基準バットが使用された。「飛ばないバット」とも言われ、昨春の県大会で6本(全54試合)だった本塁打数は、今大会は3本(同)と半減した。今大会の3本のうち、2本はランニング本塁打で柵越えは1本にとどまった。二、三塁打も含む長打数で比較すると、昨春は計160、今大会は計148とやや減少。長打を放った選手らは「(前のバットなら)本塁打の感触だった」と従来との違いを実感する。エナジックの神谷嘉宗監督は「投手の球が高めでもフライになった。芯を外されると打てない。速いゴロを意識する必要がある」と振り返る。興南の我喜屋優監督は「選抜でも守備位置が前になり、間を抜く打球が求められた。確実に1点を取る野球になっていく」と分析した。

 第106回高校野球選手権県大会は6月22日に開幕を予定する。春に得た課題を修正し、各校の戦力向上に期待したい。

(名波一樹)