14日に開催された全日本トライアスロン宮古島大会(主催・宮古島市、琉球新報社)で、先天性の弱視で16歳の頃に視力を失った岩本光弘さん(57)=米国=が初の完走を果たした。伴走者の長田達也さん(56)=那覇市=と共に、制限時間40秒前にゴール。「駄目だと思った時に一歩踏み出すことの大切さを改めて感じた」と語った。
視力を失った当時は人生に絶望し、自死を図ろうとしたこともあるが、周囲の支えで人生を前向きに歩み始めた。「見えないことを理由にせず、自分の限界に挑みたい」と、30代でヨットを始め、2019年に無寄港での太平洋横断に成功した。
宮古島大会には17年に初挑戦したが、残り約10キロで当時の伴走者が熱中症を起こし、やむを得ずリタイア。その後、トライアスロン用のウエットスーツを製造・販売するナチュラルエナジー社長の長田さんと出会う。ロングディスタンスの大会に57回出場し、全て完走している長田さんから「忘れ物を一緒に取りに行きましょう」と激励を受け、再挑戦を決意した。
スイムとランでは「テザー」と呼ばれるガイドロープを長田さんと結び、テザーの伸縮具合で進行方向を判断。最高時速50キロを超えるバイクは2人乗りで息を合わせた。
ランの終盤で腰をひねるアクシデントに見舞われた。「大丈夫ですか?」と何度も声をかけて励ます長田さんに体を預け、ふらつく足取りでゴールした。
ゴール直後に緊急搬送されたが回復。翌日、長田さんに「本当にありがとうございました」と感謝し、「今後もチャレンジし続け、多くの人に勇気を与えたい」と誓った。
(西田悠)