昨年、25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島カープ。選手を経て現在、球団職員としてチームを支えている県出身の比嘉寿光さん(沖縄尚学高—早稲田大)に昨シーズンを振り返ってもらった。(聞き手・與那覇裕子)
—25年ぶりの優勝に地元広島はもちろん、キャンプ地の沖縄市も沸いた。2016年はどんなシーズンだったか。
「近年、ファンが盛り上がっているのに、成績がついていかないことがもどかしかった。ファンを喜ばせるには勝つことが一番だと思っていたので、やっと恩返しができたかなと思う」
「2016年は、黒田(博樹)さん、新井(貴浩)さんというベテランが、若手選手に背中を見せたのが大きい。いろんなことを率先してやってくれたし、練習も一切手を抜かない。若手は、野球ってこうやってやるものだということを感じただろう。昨シーズンは、逆転勝ちが多かった。選手の間にあきらめない姿勢があり、勝つチームの雰囲気ができていた」
—2009年に引退後、球団広報を担当し(現在も兼任)、「カープ女子」の仕掛け人とも言われている。その仕掛けとは。
「球団初の広報担当で、最初は何をやったらいいのか分からなかった。いろいろ勉強していくうちにそれまで、選手のメディア露出が少なかったことに気付いた。カープは若くてルックスもいい選手が多い。積極的に取材に答えてもらったり、テレビ番組に出演してもらったりすることでファンが増えていった」
「『カープ女子』を意図していたわけではないが、女性をターゲットにした戦略はあった。女性は1人では観戦に来ないし、だれかを誘う。マツダスタジアムをテーマパークとして遊びに来てもらおうという発想があり、グッズ販売にも力を入れていた。野球に興味がない人でも、楽しかったらまた来てくれる。動いてみたら、流れがちょうどはまったという感じだ」
—今年はプロ野球9球団が、沖縄でキャンプしている。キャンプ地としての沖縄について思うことはあるか。
「他県は、キャンプを誘致するために、ものすごく施設の整備に力を入れる。気候のいい沖縄でも近年、力を入れていることは感じている。沖縄の子どもたちが毎年キャンプを見ることができ、プロ野球に接することができる環境を維持するために、球団と地元が随時話し合っていくことが大事だと思う」
<プロフィル>
ひが・としみつ 1981年4月生まれ。豊見城市出身。長嶺小2年のころ野球をはじめ、長嶺中を経て沖縄尚学高校に進学。1999年4月、選抜高校野球大会に主将として出場し、県勢初の甲子園優勝を果たす。卒業後早稲田大に進学し、六大学野球リーグの連続優勝に貢献。2004年に広島カープにドラフト3位で入団。09年に引退し、球団職員。編成、広報を担当する。