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新基地阻止 発信へ 知事国連演説 国際社会の世論喚起 敗訴で逆風、打開狙う


新基地阻止 発信へ 知事国連演説 国際社会の世論喚起 敗訴で逆風、打開狙う 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部=2022年3月、航空機より撮影
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

玉城デニー知事は17日に沖縄をたち、スイス・ジュネーブで開催される国連人権理事会に18日から出席する。国際社会に対し、過重な基地負担や、民意に反した名護市辺野古への新基地建設について訴える。県知事の出席は、2015年の翁長雄志前知事以来、8年ぶりとなる。辺野古新基地に関する国との訴訟で敗訴するなど、県にとって厳しい局面を国際社会の世論を喚起することで打開できるか、注目が集まる。

 玉城デニー知事は、国連人権理事会の三つの会合でスピーチする。それぞれ90秒と短いが沖縄の過重な基地負担を人権侵害と捉え、国際社会に関心を寄せるよう訴える。

 スピーチを予定するのは、議題別に18日の「国際秩序に関する独立専門家との相互対話」、19日の「有害物質及び廃棄物に関する独立専門家との相互対話」、21日の「一般討論」。いずれも国連NGOの市民外交センターの発言枠を使う形で、それぞれの議題に沿ったスピーチをする。

 19日にはサイドイベントとして講演会を実施する。知事が約30分間、沖縄の基地負担や基地による環境被害などについて話すことが予想される。国連特別報告者、国連人権高等弁務官事務所や難民高等弁務官事務所の幹部とも面談する予定で今後も継続的に国際社会へ沖縄の実情を訴えるための基盤づくりに取り組む。

 2015年の翁長雄志前知事の国連訪問に「島ぐるみ会議・国連部会」のスタッフとして関わった琉球大客員研究員の阿部藹(あい)氏は「口頭声明の発表やサイドイベント出席も重要だが、特別報告者と会って沖縄の人権の状況について情報提供をすることができれば、今後につながる大きな意味を持つことになる。国連へのアプローチを継続的にしていくための一歩となり、実質的な意義がある」と話した。

 国連の人権理事会では、気候変動や環境について非常に関心が高まっているという。「環境破壊が全ての人権にマイナスの影響を与えると警鐘を鳴らしている。そういった流れでは、沖縄が直面するPFASによる飲み水の汚染について訴えることは広い共感を呼ぶと思う。知事としても、県民全員に深く関わる権利について発信することにつながる」と話した。 (沖田有吾)