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【深掘り】日米は「持久戦」も想定 米海兵沿岸連隊MLRが発足、沖縄への影響は?


【深掘り】日米は「持久戦」も想定 米海兵沿岸連隊MLRが発足、沖縄への影響は? フィリピン軍との共同演習で普天間所属のオスプレイから降下する米海兵隊員。ハワイを拠点とする第3海兵沿岸連隊も参加した=7月、フィリピン(米軍サイトから)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 キャンプ・ハンセン駐留部隊の海兵沿岸連隊(MLR)への改編は「2025年までに」としていた時期が相当に早まる。米軍の前のめりな姿勢が表れている。攻撃を受けることを前提に戦い続けることを想定したMLRが県民の生活圏のすぐそばに駐留し、離島での関連訓練や自衛隊との共同訓練がさらに激化する恐れがある。 

 
 MLRは、海兵隊が離島などに攻撃や補給の拠点を設けて戦う遠征前方基地作戦(EABO)の中核をなす部隊だ。県内ではEABOの関連訓練が実施されてきた。伊江島補助飛行場はEABOの「最高の訓練場」(海兵隊のフェイスブック)とされ展開訓練が繰り返されている。22年にハンセンとキャンプ・シュワブにまたがる中部訓練場で関連訓練が実施され、武装した米兵が誤って訓練場外の県道を歩行する問題が生じた。
 日米の運用一体化が進む中、MLRは地対艦ミサイルを扱う石垣市や宮古島市などの陸上自衛隊部隊との連携が特に想定される。先島諸島での訓練も模索するとみられる。
 MLRへの改編で使用する兵器が変わる。ミサイル発射機は最新型のNMESIS(海軍・海兵隊遠征対艦阻止システム)となる予定。無人化した車両に短距離ミサイルを搭載し離れた位置から操作する。分散して戦うEABOのために運びやすさを重視し車両は運転席をなくして小型化。一方、兵員が発射機と離れることで被害を最小限に抑えるという「利点」も念頭にある。敵の脅威圏内で攻撃を受けて損耗しながら戦い続けることが想定された部隊であることを表している。有事に日米は時間を稼ぐ持久戦も想定しており、沖縄をはじめとした南西地域がその拠点となる恐れがある。
 MLRそのものに対する懸念に加え、在沖米海兵隊をグアムに移転する計画への影響を不安視する向きもある。既存の第12海兵連隊はグアム移転が計画されていたがMLR改編で沖縄に残ることになったためだ。日米両政府は1月の2プラス2ではこの部隊を沖縄に残すとした一方「再編後の在沖米海兵隊の規模(約1万人)に変更はない」とした。だが、代わりにどの部隊を沖縄から転出させるかは明らかになっていない。
 県の溜政仁知事公室長は17日、「(第12海兵連隊の代わりに)どの部隊が(グアムに行くのか)という質問に全然回答がない。いまだにその回答がないのは大きな不満がある。MLR自体もそうだが、グアム移駐についても、実効性のある計画を求めていかなければいけない」と強調した。 (明真南斗、知念征尚)