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米軍の本音 新基地完成後も普天間存続<佐藤優のウチナー評論> 


米軍の本音 新基地完成後も普天間存続<佐藤優のウチナー評論>  佐藤優氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 辺野古新基地建設を米軍が必ずしも望んでいないという本音が露見した。

 <米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について、米軍関係者は(11月)7日、記者団の取材に対し、新基地の完成が「早くて2037年になる」と述べ、移設が終わるまでの間「普天間基地はここで維持される」との認識を示した。軍事的優位性は普天間基地の方が高いとの考えも語った。台風など災害の影響で工事はさらに遅れる可能性もあるとし、普天間基地の危険性除去までの期間が長期に及ぶ可能性を示唆した。

 /現状の普天間基地の重要性の例として、滑走路の長さが2800メートルあることや、西海岸の高台にあることを挙げた。滑走路が長いことでさまざまな大きさの航空機を運用でき、西側の高台に面しているためレーダーの視界が広がるなどの利点があるとした。/一方、移設先となる辺野古新基地は滑走路が1800メートルと短いほか、東海岸の埋め立て地という、普天間基地とは真逆といえる環境にある。/この関係者は政治面を考慮せずに軍事的に考えれば「普天間基地の方がいい」と語った>(8日、本紙朝刊)。

 仮に辺野古に新基地ができても米軍は普天間に居座る可能性があると筆者は受け止めている。また日本の政治エリート(国会議員・官僚)のみならずマスメディア関係者の沖縄に対する冷淡な態度に鑑みれば、米政府が「辺野古新基地では十分な防衛機能が果たせないので、台湾有事に備えて普天間飛行場も当面併用したい」と申し入れれば、日本政府がそれを沖縄に押しつける可能性が十分あると思う。

 どうも沖縄戦が終わって78年以上になる現在も米軍は沖縄を戦利品に過ぎないと認識しているようだ。だから宜野湾市民の危険を顧みず、普天間飛行場に居座ろうとすることができるのだ。

 防衛省は在沖米軍幹部が本音を漏らしたことで、かなり焦っている。

 <沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関して、米軍幹部がメディアワークショップで新基地建設完成後も普天間飛行場を維持したい考えを示したことに対し、木原稔防衛相は10日の閣議後、記者団に見解を問われ「普天間飛行場の固定化を避けるために辺野古移設が唯一の解決策だと米側と累次にわたって確認している」と答えた。/米軍幹部の発言そのものに対する見解については「逐一コメントすることは控えたい」と述べた。その上で「私も10月に訪米し、オースティン米国防長官と会談したが、その際も辺野古移設を含む米軍再編計画について今後の着実な進展のために日米で緊密に協力していくことを確認した」と強調した>(10日、本紙電子版)。

 こんな説明では、県も県民も、筆者を含む県外に在住する沖縄人も納得しない。日本政府や米国政府の「良識」に期待するのでは、沖縄の死活的利益を擁護することはできない。「良心的な」日本人と米国人に同情されながら差別を押しつけられるよりも、沖縄人自身が自己決定権を強化し、自らの力で沖縄の利益を守る仕組みを作らなくてはならない。

(作家、元外務省主任分析官)