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オスプレイ墜落1カ月 安全性疑問、「南西シフト」影響も 「運用、即停止すべき」 元米海兵隊員 目撃 再開 冷や水


オスプレイ墜落1カ月 安全性疑問、「南西シフト」影響も 「運用、即停止すべき」 元米海兵隊員 目撃 再開 冷や水 米軍のCV22オスプレイを捜索するヘリコプターと海上保安庁の船舶 =11月、鹿児島県・屋久島沖
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米空軍輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落し、米軍はオスプレイ全機種の飛行を停止している。機材の不具合の可能性が指摘され、米下院委員会は安全性を疑問視。運用への懸念が再燃している。29日で事故から1カ月。陸上自衛隊も飛行を見合わせ、防衛省内ではオスプレイ佐賀移駐や「南西シフト」への影響を不安視する声が漏れる。
 沖合から屋久島空港の方向に向かってきたオスプレイは突如、180度ひっくり返った。左エンジン付近から火を噴き、プロペラがはじけ飛ぶ。機体は真っすぐ落下し、爆発音とともに海面から黒煙が立ち上った。
 機影がレーダーから消失したのは11月29日午後2時40分ごろ。墜落現場から約400メートルの海岸で釣りをしていた農業平田耕作さん(68)が目撃した。「ほんの3秒くらいの出来事。現実と思えなかった」と振り返る。
 機体の不具合が強く疑われる事態に、米軍は12月6日(現地時間)、空軍だけでなく海軍や海兵隊を含め全てのオスプレイの飛行を世界中で一時停止。事故原因を徹底的に調査すると表明した。
 陸自内では「原因も分かっていないのに、米軍より先に飛ぶことはできない」(幹部)との見方が支配的で、今後の見通しは立たない。
 屋久島では早期の運用再開に否定的な声が上がる。事故を目の当たりにした漁師中島正道さん(68)は「オスプレイが頭上を飛ぶことに恐怖を覚える。飛行再開なんてとんでもない」と憤る。
 元米海兵隊員の政治学者ダグラス・ラミスさんは機体の構造的な問題を指摘し「オスプレイの運用は2050年代までとされているが、即停止すべきだ」と訴えた。
 普天間飛行場にMV22オスプレイを配備している米海兵隊は11月「第12海兵沿岸連隊(MLR)」を発足させた。小規模部隊を島しょ部に分散させる「遠征前方基地作戦(EABO)」に特化した部隊だ。
 中国軍を念頭に、離島に機動的に展開し作戦を遂行する。垂直離着陸が可能で、固定翼機では着陸できない場所でも活動できるMV22は部隊の“足”に位置付けられる。
 陸自は、千葉県の木更津駐屯地に暫定配備しているV22オスプレイを佐賀市で建設中の新駐屯地に移す計画だ。長崎県の相浦(あいのうら)駐屯地を拠点とする離島防衛専門部隊「水陸機動団」の輸送が主な任務となる。
 陸自にとって水機団とV22は九州・沖縄の防衛力を強化する南西シフトの象徴的存在だが、ある陸自ヘリパイロットはCV22墜落について「佐賀配備へかなり温度の低い冷や水だ」と語った。