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憲法は、国に守らせるもの 母が沖縄出身の白井さん、詩で理念訴え 絵本「わたしはきめた」


憲法は、国に守らせるもの 母が沖縄出身の白井さん、詩で理念訴え 絵本「わたしはきめた」 詩人の白井明大さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本国憲法の大切さを広く共有しようと、詩人の白井明大(あけひろ)さん(53)=鳥取県=が憲法の前文・条文を優しい詩で表現した本を書いた。沖縄出身の母から平和と命の尊さを教わったという白井さん。「憲法は『二度と戦争をしてはいけない』という当時の人々の真剣な思いから生まれた。沖縄に『命どぅ宝』という素晴らしい言葉があるが、憲法にも同じ重みがある」と語る。

 東京出身だが、東京電力福島第1原発事故をきっかけに2011年に沖縄へ移り住み、21年まで暮らした。

 初めて憲法を「詩訳」したのは、コロナ禍でステイホームが呼び掛けられていた20年の憲法記念日。「詩を書く者として何かできないか」と考え、憲法前文を詩にしてSNSで発信した。

 昨年、憲法や人権に関わる法律などを詩にした本「日本の憲法 最初の話」と、憲法前文の詩訳を絵本にした「わたしは きめた」を発刊。憲法は国が国民に守らせるものではなく、「わたしやあなた」が国に守らせるものだと伝わるように「わたしは(憲法を)きめた」と表現した。


2023年に日本国憲法を詩訳した本「日本の憲法 最初の話」(左)と絵本「わたしは きめた」

 だが憲法で掲げる平和主義や民主主義が年々後退していると危惧する。「辺野古の新基地を進めようとする政治家は沖縄の負担や痛みを感じなくなっている」と指摘。中国を念頭にした南西諸島の軍備強化には「緊張を高める。犠牲になるのは島の人々だ」と語る。

 白井さんの母は1945年、親が疎開していた千葉で生まれ、沖縄で育った。対馬丸に乗ったいとこが米軍の攻撃で命を落としたことなどを白井さんに語って聞かせたという。

 人々の戦争の記憶が薄れ平和主義が揺らぐ今、白井さんは憲法前文の詩訳でこう語り掛ける。

 「私は/ずっと平和がいい。/この星で生きていくための/人間と人間の/つながりの土台を支える/とてもとても大事な理想を/深く心に持っておくよ。」

 (伊佐尚記)