代執行訴訟 第1回口頭弁論後の知事会見一問一答全文


 法廷後の会見で、翁長雄志知事と記者団の一問一答は次の通り。

 -全国的にも注目された裁判の1回目が終わった。率直な感想を聞かせてほしい。

 知事 1回目の口頭弁論で、私の冒頭陳述ということで話をすることができ、大変良かったと思っている。法律的な準備書面とか、私のもっと詳しい陳述書なども証拠書類も出してあるから、私自身は沖縄の気持ちというか、沖縄の県知事としての気持ちを話した方がいいのではないかと思い、沖縄の基地の問題と、振興策についての誤解もあるので、そういうことなどを重点的に話をさせてもらった。

 私が終わった後、裁判官の方から「大変分かりやすい話でした」という話もあったので、その思いは伝えられたかなとは思っているので、その意味では大変私自身が冒頭陳述をしたというのは意味のあることだったなと思っている。

 -知事の意見陳述の後に、国側の代理人が法廷は政治議論の場ではないと発言した。そのことをどう思うか。

 知事 向こうがそういうふうに言うのは、心証の問題で、それはそれで考え方として向こうが持つのは勝手だが、私からすると、沖縄のそういったもろもろというのは、やはり私がいつも魂の飢餓感と言っているように、その落差を埋めないと、裁判全体の、それが取り入れられる、取り入れないは別にして、思いを伝えるということが大切なので、あれは政治的なものというよりもむしろ、沖縄県民の心情、心を私は伝えたわけで、そして、それ以外の法的な面はしっかり書面で、提出されているから、私はその思いを話をするということで冒頭のそういうことになった。だから、向こうがそれにどう感じるかなどということは考えたこともない。

 -法廷に出て、裁判所にあらためてどういう判断を望むか。

 知事 私はそういう立場でそこに居合わせるというのは初めてなので、比較する方がいないから、今の裁判官がどういう感じの人だとか、そういうものをいわゆる比較して、なんかこれっぽいとかあれっぽいとかというような話は私からするとできないので、ただ、真摯(しんし)な方だなということだけは感じたから、その辺の中に私たちもしっかりと私どもの思いを、考え方を伝えて、しっかり判断していただけるというふうになればありがたいと思う。

 -法廷の場で国側の主張を聞いてどういう感想、印象を持ったか。

 知事 予想通りというか、そういう意味では今日まで、ことしは集中協議もあったし、それ以外にもいろいろ話し合ったことがあるが、まあ、大変それぞれの担当大臣なども強権的な「辺野古唯一」という、そういったものの中で推し進めてきたものがそういった書面にも現れてきているなという感じがしている。それについては当然、想定内なので、弁護士の先生方と意見交換しながら、またうちの竹下先生(弁護士)を中心にして、しっかりとやりとりをされていたから、裁判官にもいい形で、それぞれの考え方が伝わったのではないかなと、このように思う。

 -最後にこの裁判で問われているのは承認取り消しの是非だけではないと。あらためてこの裁判で問われているのは何だと考えているか。

 知事 僕は当然この裁判は直接的には取り消しの訴訟なので、そういった法廷、法律論というのは確かにこれがメーンであることは間違いないが、やはり今の沖縄の置かれている基地問題とか、今日までの歴史を含めて考えたりすると、また昨今、昨年来の今年中の安保法制とか、いろんなものなども踏まえていくと、やっぱり日本の地方自治の問題、民主主義の問題がいま、しっかりと問われているのではないかという感じがしている。そういった法律的な判断もさることながら、やはりそうした背景なども、どの程度、斟酌(しんしゃく)してくれるか分からないが、私が話をすることの意味合いがあるのではないか。そういったことを話す中に、そういうものを理解しつつ、法律的な解釈になればいいという気持ちで、沖縄の歴史と沖縄の心情、そういったことなどを話す中に、これからのいろんな法廷でのやりとりが出てくるのはありがたいなと思っている。

 -陳述で国民の全てに問い掛けたいと語った。一義的には裁判所に対しての意見陳述だったと思うが、国民全体に呼び掛けるという形にした理由は何か。

 知事 やはり、沖縄の基地の問題は第一義的に沖縄の問題が大きいが、しかしそれは翻って考えてみると、日本の地方自治、例えば、福島だったら原発の問題を抱える、あるいは核ごみの問題を抱えるところもあるだろう。そういった本当にその地方自治体だけに、ある意味で全体的なもののしわ寄せが来たときに、本当の意味での地方自治というものをみんなで考えていかないと、これはなかなか難しいというような思いもあったので、沖縄の問題を通じながら、日本全体で物事を考えてもらいたいというような意味合いで、特に地方自治と民主主義という意味でそれを国民の皆さま方にもこの裁判に注目してもらいたいというふうに思った。ただ最後の1行はそういうことで、沖縄と日本の将来のためにご判断をいただきたいというようなもので裁判官の方には一番最後の1行で訴えているので、その上の2行以上は、国民も含めてそういうふうに訴える私というものをまた裁判官が見ていただきたいということも最後の1行で入れてある。

 -県側が抗告訴訟を8日にも提起するとの一部報道があった。抗告訴訟の見通しについて聞かせてほしい。

 知事 これはシミュレーションの中でずっとあったので、議論はしているが、今、弁護士と相談をしながら、やはり期限というのはあるはずだから、そういったものも想定しながら、物事を進めていくということにはなっていると思う。ただ、最終的に今この私がいつどうというようなことは、きょうの出廷の方に力を入れていたので、事務方の方で、弁護士の皆さん方とも相談しながらやっていると思うが、さっそくこれの私もきょうどこまで来ているかというようなことも含めて判断したいと思っているが、私自身の考え方は申し上げてはいる。ただ、今、細かい話をすると齟齬(そご)があったらいけないので、気持ちは固まっているが、何日がどうだとかという話をすると、間違った話になったらいけないので、あした本会議もあるし、その時か、あるいはまたいい形でお伝えできればいいと思っている。

 -法律論以外のことを含めて沖縄側が主張した時に、きょうの裁判官とのやりとりを通じて今後の訴訟の中で、そういったものが審理の対象になると感じたか。

 知事 まあ、裁判に限らずだが、お互い人間がやることなので、無味乾燥な法律論争だけではなくて、確かにそれに影響を与えるかどうかというのは人によっては取り方も違うと思うが、やはりお互い分かり合うことは大変重要なことなので、そういったようなベースを話をして、そしてまたどの程度ご理解いただけたかの判断をするわけにはいかないが、それを私の方で話をするということは大変重要な要素になっているのではないかなというふうには思っている。しかしこれは読める話じゃない。ただ、私も政治は長いから、その意味での人と人とのそういった思いの通いというのは、必ず何かの時に参考になるのではないかなと思っている。