講演内容04


講演内容4


均等法後は適性に応じて■


 女性にどういう仕事をしてもらうのか、均等法スタート後の調査によると、補助的な仕事や女性の感性が活かせる仕事ということではなく、その本人の適性能力によってあらゆる仕事が開かれている、男性と同じように適性、能力に応じて配置をしているという企業がほとんどです。


 これまで多くの人々が、男性にしかできないと思っていた仕事につく女性もどんどん増えています。例えば建設業での鉄筋工や重機オペレーター、運輸業でもトラック、バス、タクシーの運転手の方々、製造業では自動車の組み立てラインにも女性が増えてきています。卸小売業では店頭には女性がもともとたくさんいましたが、最近は仕入れにあたるバイヤーの方々にも女性が増えてきています。また新聞や放送業、たぶん琉球新報社におかれてもそうではないかと思いますが、私の10年くらい先輩に当たる女性記者の方々は婦人部や生活部などに配属される方が多かったように思いますが、今や政治、経済、社会、あらゆる部に女性記者がいます。首相官邸の記者会見室がテレビで時々でますが、あそこにも女性の姿がチラホラと見られるのはお気づきかと思います。それからカメラマン。会場内にも女性カメラマンがいらっしゃいますが、私がかつて取材を受けた時には、重い機材を抱えて女性が入ってきて、男性が光を当てるわりと軽い銀板を持っているという事も経験しました。こういった光景を見ると、本当に世の中変わったなと思いました。このように女性だからできないと思われていた仕事に、女性がどんどん就くようになってきて、また企業の方でも男女を問わずもてる能力を活かしてもらうというように切り替わってきているのだと思います。


 それから国家資格職種、医師、弁護士、公認会計士などですが、ずっと以前から女性にも門戸は開かれていましたが、最近はこういう職種を選ぶ女性達も非常に増えてきておりまして、数字はやや古いのですが調べてきました。例えば医師は、1986年、ちょうど均等法がスタートした年は女性の占める割合が10.6%でした。それが2004年の数字しか見つかりませんでしたが、16.5%になっていました。それから司法試験の合格者は1985年までは10%前後だったのが、いまや23.9%で全体の4分の1に、弁護士に占める女性の割合も1985年までは5%弱だったのが、12.5%にと高くなってきています。


3分の2の企業に管理職■


 それから昇進についても、今や女性に昇進機会はないという企業はなく、現に企業の3分の2に女性の管理職がいるという状況です。それから係長や、課長、部長にどの程度女性がいるかということですが、ここは残念ながらまだ多くはないのですが、それでも均等法以前に比べ3倍ぐらいになっています。例えば2005年で係長は10%を超える割合で女性が占めています。課長の5.1%、部長の2.8%が女性というように、まだまだ少ないのですが、着実に増えてきています。すでに部長より上の執行役員や取締役の女性も出てきています。


 このように女性の就業の実態は大きく変わってきました。何が変化をもたらしかと言うと、まず企業側が女性の雇用管理について、大きく考え方を変えたということがあると思います。


 均等法が施行されて間もない頃に、あるデパートの社長さんとお話する機会がありました。その方がおっしゃるには「デパートというと女性が随分活躍していると思うでしょう。確かにそうですが、実は我が社は法人営業には女性は就けていなかった。しかし法律で努力義務とはいえ、あらゆる職種に男女の機会均等をと要請されたので、おっかなびっくりではあったのだが法人営業に女性を就けた」と、複数就けられたようでした。そうしたところ「男性と比べて全く遜色のない成績を上げ、中には男性以上に成績を上げた女性もいて、我々はこれまでいかに人材を無駄にしてきたかということをつくづく思い知らされました。先入観でものを考えてはいけないと改めて思いました」と伺いまして、非常に嬉しく思ったのを覚えています。


 つまり企業の皆さん方は、法律の要請ができたということで、なるべくその要請を満たすように取り組まれた。そこで期待をかけられた女性達が「会社から期待されたのだから、それに応えよう」と頑張って成績を上げたことで、企業は女性だからできないと思っていたのは単に思い込みに過ぎなかったことを知る、そしてさらに一層女性の活躍を図るような取組が行われ、それに応えるように、また女性も頑張るという良い循環が始まったわけです。かつてはそうではなくて、企業が、女性は若いうちだけ働いてもらえればそれでいい、将来の幹部を女性に期待していないということになると、女性の方も職場の人間関係や育児と仕事との両立の難しさなどから、会社から期待されていないのなら働き続けることはないということで辞めてしまう、すると企業側も「だから女性はあてにならない」となって、悪い循環になっていました。それを良い方向に変えたのは、ネジの向きを変えたのはやはり均等法の力であったと思います。


昇進意欲も高まる■


 当然のことながら、女性達の意欲も高くなってきました。例えば女性の昇進の意欲。女性にはそもそも昇進したくないと思っている人達が多いのではないかと一般に思われています。かつては確かにそういうこともありました。女性について、昇進したいと思っているかどうかを調査した結果があります。均等法よりちょっと前のものですが、昇進したいと答えた女性は16%弱だったのが、平成7年、今から12年前の、均等法が出来てしばらく経ってからの調査結果では、3分の2の女性が自分は昇進したい、さらにそのうち半分以上の女性が自分は出来ると思うと答えています。このように女性の意欲も大きく変わってきています。「会社が期待してくれているということがわかったときには、とても嬉しかった。一層頑張ろうという気持ちです」と話す若い女性管理職も増えています。


 世の中がいい循環になってきたことも受けて、当初、世の中から批判を受け、私にとってみにくいあひるの子であった男女雇用機会均等法も、その後2回改正され、期待どおり白鳥に成長しました。今や当初努力であった募集・採用など機会均等確保についても、全て男女差別を禁止するという規定になりました。この改正を審議した際には、企業側の方からも、それ程の強い反対はありませんでした。均等法の施行を契機に、女性がしっかりと活躍してくれる、期待通りの働きをしてくれるということを、企業側も経験で学んだことがその背景にあると思います。いわゆる女子保護規定も全て撤廃されました。女性側も働き続けることについては相当の気持ちを持って、家庭責任についても夫の協力を得るなどいろいろな形で仕事と両立させる努力をし、併せて国も育児介護休業法の制定や保育施設・サービスなどの充実などさまざまなサポート体制を整えたということもありますが、子育てしつつ頑張る女性達が増えてきたといえます。


社会の見方も変わる■


 企業側の取組と女性達の努力・意欲に加えさらに大きく変わったのは、社会全体の女性が働くことについての見方です。ごく最近発表された内閣府調査によると、「夫は外で働き妻は家庭を守るべきであるという考えに賛成ですか反対ですか」という設問に対して、そういう考え方に反対だという人達が初めて52%と半数を超えました。それまでは例えば、平成4年の調査結果ではその考えに賛成という人が6割で反対という人が34%でした。それが今や反対が52%と逆転しました。もちろんこれは考え方ですから、個々の家庭において夫が外で働き、妻が家庭を守ることを選択すること自体を否定しているわけではありません。社会がそうあるべきだと決めつけることに反対という意味です。また女性が職業を持つことについてどう考えるかという点については、平成4年の調査では「子どもができたら仕事を辞め、大きくなったら再び職業を持つほうがいい」と答えた人が43%、「子どもができても、ずっと仕事を続けるほうがいい」と答えた人が23%でした。それが今回発表された調査によると、「子どもができてもずっと職業を続けるほうがいい」という人は43%、途中で中断した方がいいという人が33%というように、女性が職業を持つことについての社会の意識が大きく変わりました。また、10年ぐらい前から共働き世帯のほうが専業主婦世帯よりも多くなってきて、ずっとその傾向が続いています。


 話は少し変わりますが、我が国の将来人口の見通しをご紹介したいと思います。資料(1)我が国の人口の推移、資料(2)諸外国の合計特殊出生率の推移、資料(3)労働力人口の見通しを配らせていただきました。


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