講演内容07


講演内容07


公明党との関係


 それからもうひとつ公明党との関係というのがございます。最近の自民党の選挙は、はっきり申し上げまして、公明党といかに協力関係を作るかということで、かなりの部分で決まっているわけです。それはここ沖縄でも、そうではないかと思います。それが実は参議院選挙だけは、やや違うということなのです。


 なぜかというと、参議院選挙というのは公明党にとっては、重要度が高いので、自分のところの票を取るのが最優先になっていて、自民党さんに勝たせようというインセンティブはやや少ない。


 しかも、ここで政権党に勝たせて公明党に為になるかどうかということです。衆議院選挙では、公明党も自民党に勝たせたいということは、政権が安定しますからいいとして、公明党からすると、参議院では自民党は数がないぐらいの方が公明党の構成力が高まるのではないかということが内心あるわけです。ですから自分のところの選挙ならば一生懸命しますが、自民党の選挙をいったいどこまですればいいのかということです。


 もちろん聞かれれば「します」と言うと思いますが、そういう力学がある中で憲法問題とか安保問題や歴史の問題で、公明党支持層から言うと安倍政権というのはちょっと不満があるということであります。そういう時に一生懸命するだろうかというのが、自民党の不安状況だと思います。


 それでは民主党の方にいきます。現在のところ、私の予想は、参議院選挙で、民主党はそんなに勝てないのではないか。というのは、民主党が弱いからです。自民党も弱いのですが、民主党も弱いものですから、今のところ安倍さんの選挙戦術は逃げ切りです。


 まさに同じことをやって成功した例が、最近現れました。それは東京都知事選挙です。石原慎太郎知事が再選されたのは、はっきり申し上げまして石原隠しをやっているわけです。石原らしさを選挙期間中は急に避けました。お詫びから始まり低姿勢で勝ちました。これで言うと、相手が弱い時は争点を作らなければ、投票率もそんなに上がらない中で「やっぱり老舗だな」といってそこそこ石原さんは票が取れてしまいます。自民党の選挙戦術にも同様の要素がある。


小沢代表の戦略


 ところが、民主党がいまやっていることは、そのことが問題になる。小沢代表の戦略というのは、ご案内のように組織票の積み上げです。労働組合をきちんと固めて、その上、自民党の支持組織に食い込んでいって票を獲るという、票を読む選挙、つまり足し算です。


 どこかに500票あるか、そのうちの300票を貰おうという話をして、足しているうちに選挙ができるわけです。自分の味方のはずの票を獲って、ご存知の通り労働組合が民主党に入れる票の確率は一般国民とまったく一緒で、労働組合だから民主党に入れているとは限らないというお寒い現実がこれまでありました。幹部は応援しているけれども、組合員は入れていないというのがこれまでの民主党の選挙でした。「それではいかん」と小沢さんが思うのも当然であり、幹部はポスター貼りしてくれるけれども、組合員はさっぱり入れてくれてないと、これはよくないです。


 ただ、そういう足し算だけで民主党は政権が取れるかと言えば、基礎票が自民党と民主党はぜんぜん違いますから、足し算だけで民主党が勝てるわけがありません。これまで民主党が、議席を取ってきたのは、結局のところ、ある意味では空中戦、掛け算の選挙です。何か政権の不満を集めてきて、一騎打ちに持ち込めば、不満層の票を集めて勝ってしまいます。思わぬところから票が出てくるのが民主党の選挙です。そういう点でいうと空中戦が必要です。民主党支持層と小沢代表がやっておられる選挙運動との間に大きな矛盾があって、民主党イメージが曖昧化して、民主党は何をするのかよく分からないということになってきます。これで政権を任すかというと、そこの部分が解決するかどうか問題であります。


 ただし、もしかして選挙前に大胆なイメージ転換をしますと、大きく民主党が伸ばす可能性がないとも言えません。政権側は、これから大胆な転換は難しいのですが、野党である民主党は身軽なので、これから仕掛けても間に合うところがあります。それは参議院選挙というのは極めて緩い選挙だからです。


 3年前の参議院選挙はどういうことになったかと言いますと、自民党の議席が民主党を下回るという衝撃的な結果が出ました。しかしながら、その数ヵ月前はどうだったかと言うと、今頃は「国民年金未納三兄弟」なんて言っている時期でした。民主党の管直人代表が辞め、小沢さんも未納だったとかで、仕方がないから岡田克也さんが党首になっていて、5月の連休の頃、民主党は潰れるのではというぐらいの状態でした。その民主党が2カ月後には自民党を凌ぐ票を獲っているというのが民主党の選挙で、これは自民党にとってはなかなか安心できないわけです。


自民はいくらか減る


 そういう点からいうと、私は今からもう見えたという自信はまったくございません。その点からすると、参議院選の結果は、小泉さんの時に獲った票ですが、そのとおりに獲るというのはシンドイので、おそらく、いくらか減ります。


 都市近郊では公明党との関係もありますから、民主党を二人立てても、自民党は一人しか立てないところがたくさんあるので、ひとりずつになって、間違って民主党が二人取ってしまうと、前回選挙で民主党は減っていたので、今回ちょっとは増えるでしょう。ただ、自民党をしのぐほどとられるかどうかはわからない。なかなか難しい状況です。


 自民が減って、民主が増えても、それだけでは、自民党の勝ちです。先ほど申しましたように、石原さんのように400万票獲らなくても270万票獲っても知事は知事です。少々減っても参議院で過半数取っていれば、何の心配もありませんので政権は勝ちだということであります。


 逆に民主党が勝つということはどういう時かというと、はっきり申し上げて参議院選挙で差をつけて自民党・公明党を過半数割れに追い込むことです。差をつけてというのは何を言っているのかと申しますと、参議院にもいろいろな方があり、野党系だといっても、おそらく何人かの方は自民党が数人足らないというと、自民党と協力しようと無所属になるとか、そういう動きはあると思います。ギリギリになってくると思います。このように、過半数に足らないといっても、一人や二人のところでは自民党はいくらでも打つ手があるとなってくると、ある程度差をつけて民主党は勝たなくてはしょうがないのです。おそらく理想的には、自民党・民主党というところで、できれば20議席ぐらいの差をつけて民主党が勝つというようなことになってくると、政権は追い詰められます。


 このように民主党が勝った場合、民主党が望んでいるように政権交代に繋がるためには、いくつかの条件があります。それだけでは政権交代しません。おそらく自民党内でも安倍降ろしが出てくるようであれば、政界混乱によって、民主党に可能性があります。しかし、それが分かっていますから、安倍政権側は、とりあえずは「いや負けてない」と言い張るしかありません。


 政権は、憲法で首相指名選挙において衆議院の議決が優先するのだから、衆議院の多数さえあれば、問題ないと突っぱねた時に、民主党に手があるかというと、意外と手が少ないです。法案を参議院でブロックするといいます。しかしながら、国民の生活に関係のある法案を自民党政府側が出して、参議院でブロックして何カ月も放置する、採決しない、そういう時に批判の矛先はどっちに向くかというと、おそらく最初は民主党頑張れと言っていても、しばらく経てば「どこかで妥協しろ」という話に必ずなってしまいます。そうなると、ボールは民主党の側へ行きます。


 小泉前総理とか安倍総理自身も参議院選挙は政権選択ではないから負けても大丈夫だと言っておられるのは、私の言っていることを理解してくださっているからだと認識しております。


 ただし、自民党が逃げ切れない状況もあり得ます。先ほどお話しましたが、安倍さんは自分の力で国民の信任を得たことは一度もありません。そうすると今度の参議院選挙は、最初の政権選択選挙ではないかということです。するとそれで差をつけて負けるというのは、国民は見放しているのだろうと。だから総選挙を要求するということには理屈があります。


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