鮮烈「琉球イラストレーション」全国を魅了 コザから発信、ふるさと返礼品にも


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 【沖縄】コンピューターを駆使して南国のイメージを表現する「琉球イラストレーション」を描く与儀勝之さん(47)が、沖縄市のパルミラ通りにアートギャラリー「soranoe」(ソラノエ)兼アトリエを構えて5年目を迎えた。県内外で活躍の場を広げ、国内各地の展示会で魅了されたファンも多い。市のふるさと納税の返礼品にも選抜されている。

独自の世界観の鮮烈な作品を紡ぎ出す与儀勝之さん。文字のない絵本作りにも挑戦している=3日、沖縄市のギャラリー兼アトリエ「soranoe」

 与儀さんは県立芸大のデザイン専攻を卒業後、東京でグラフィックデザイナーとして勤務。しかし達成感を持つことができず29歳に帰郷した。

 フリーで仕事をしながら絵を描くことに関心が膨らみ、研さんを重ねてきた。その中で紅型や螺鈿(らでん)の伝統工芸品、浮世絵、縄文土器などからインスピレーションを紡ぎ、南国沖縄の強烈な風土と融合させることで独自の宇宙、世界観を構築してきた。

 クジラや熱帯魚、ヤンバルクイナなど沖縄の生物などを鉛筆やペンを使い独特のフォルムで描き、コンピューターを駆使して鮮烈な彩色を施す。そして高発色、高耐性のアート用インクジェット印刷で作品を仕上げていく。

 南国のイメージがあふれる作品は注目を浴び、県や市の広報誌の表紙に長期間採用されたほか、県内大手飲料メーカーともコラボした。文字のないユニークな絵本も発行しているほか、グッズ制作など作品作りの領域を意欲的に広げている。

 近年は東京、神奈川、千葉、埼玉、京都、奈良など県外をはじめ、台湾でも作品展を開催し、多くのファンを獲得しつつある。

 作品の購入者からは「感動、気持ちが癒やされる」「部屋が明るくなった」「何時間も作品の世界に浸ることができる」とさまざまな感想が寄せられている。与儀さんは「ワクワク、ドキドキ感を持ってくれるだけでアーティストには何よりもうれしい」と話す。

 那覇市出身の与儀さんが「プチ東京」のような喧噪(けんそう)からの精神的解放を求めていたところ、縁が重なりあって、沖縄市の中心商店街エリアにアトリエを構えることになったが、「今ではすっかりコザ文化に魅了されている」と笑顔が弾けた。

 ギャラリーを若い絵画作家らに積極的に提供するなど「アート発信の拠点にし、街の活性化にもお役にたちたい」と新風を吹き込んでいる。問い合わせは(電話)098(988)7848。
 (岸本健通信員)