【うるま】過疎化に直面するうるま市の津堅島で、島にルーツを持つ神谷恭平さん(28)が音楽による島おこしに取り組んでいる。神谷荘オーナーの神谷さんは祖父から民宿を引き継ぎ、今年5月から営業している。三線の始祖とされる赤犬子の生誕の島であることなどから「津堅島ミュージックアイランド計画」と題し、島からアーティストを輩出しようと宿を活用している。
島の人口は1963年の1779人から今年7月時点で375人にまで減少した。神谷さんによると、約20年前はフェリーを持つ祖父が100人規模で本島から人を集め、宿で宴会を催すのが日常だった。しかし神谷荘も高齢化で廃業の危機に。東京で音楽関係の仕事に携わっていた神谷さんが「あったものが無くなっていくのが悲しい」と継承に名乗りを上げた。2019年5月から約1年間、祖父から仕事を学んだ。
しかし、いざ宿を継ごうとした20年春、新型コロナウイルスが流行して休業。その間は特産品のニンジン栽培に精を出した。それでも「農作業中にアイデアがどんどん沸いてきた」と音楽で島おこしする計画を練った。
津堅島は三線を広めた赤犬子が生まれた島だ。神谷さんの祖父の幸一さん、いとこの千尋さんは民謡歌手、シンガーの石嶺聡子さんは祖父のめいだった。神谷さんは「音楽に囲まれて育った。県内で活動するアーティストを招き、神谷荘を舞台にしてもらいたい」と考えた。
営業を開始した今年5月からD―51など10組以上が宿で演奏しており、毎日正午からSNSなどでライブを生配信している。「投げ銭」などの収益はアーティストや島のビーチクリーンに還元する。
神谷荘で働きながら歌うhinakoさんはオリジナル楽曲「LIFE」などを透明感のある歌声で披露し、ファンを魅了している。hinakoさんは「何もない島だからこそ、さまざまな挑戦ができる」と話す。神谷さんは「今まであったものを守り、その上で新しいものを生み出したい」と奔走している。
(古川峻)