個人形で多くの偉業を達成してきた喜友名諒がかつて、最も心に残っている国際試合を問われて挙げたのは、個人戦ではなく3人で上がった試合場での一戦だった。
2016年、オーストリアで開催された世界選手権を指している。ともに引退を発表した金城新、上村拓也と組んで挑んだ団体形。この大会で喜友名は個人2連覇を決めたが、3人では世界選手権での初の頂点だった。
最も年上の喜友名、1学年下の金城、さらに一つ下の上村。3人が組んだのは喜友名が大学1年だった2009年の夏。翌年、団体形メンバーとして初めてナショナルチーム入りを決めた。12年のプレミアリーグインドネシア大会で初めて世界大会に出場し3位。同年、プレミアリーグトルコ大会で世界一となるなど、国際試合で実績を残し、最高峰の世界選手権で3人で初めてつかんだ優勝がオーストリアでの大会だった。
空手が初採用された東京五輪は実施種目は個人のみ。大会に向けて3人それぞれが代表を目指した。激しいポイントレースを制して代表を決めた喜友名。金メダルを勝ち取った戦いには戦友2人の思いも背負って臨んでいた。