戦前の久高、絵で記録 山崎さん、お年寄りの思い出基に


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久高島の戦前の暮らしの様子を、絵に書き起こす活動を行っている山崎紀和さん=11月16日、南城市知念の久高島

 【南城】南城市の久高島に住む画家、山崎紀和さん(38)=静岡県出身=が、島のお年寄りに戦前の島の暮らしについて聞き取りを行い、絵に記録する活動を行っている。高齢化や過疎化が進む中、「昔の生活にはいろんな知恵が詰まっている。ただ昔を懐かしむだけではなく、しっかりと記録に残し、その成果を島に還元したい」と力強く語る。

 もともと東京で絵に関わる仕事をしていた山崎さん。28歳で沖縄に移住し、那覇や石垣島などを転々とした。創作活動から離れていた時期もあったが、32歳で絵を再開。久高島南西のメーギ浜にテントを張り、野宿しながら絵を描き始めた。
 そこから島民との交流が生まれ、現在では島民から古民家を借りて住み、創作活動を行っている。
 聞き取り活動を行う契機となったのは2012年に手掛けた、NPO法人久高島振興会が発行する島の地図のイラストだった。「どうせなら観光用でなく、民俗学的に意味のあるものを」との思いから、拝所や生活道はもちろん、島を囲むリーフの数多くの細かな入り江に付いた名前までお年寄りから丹念に聞き取り、地図に反映させた。
 その作業の“副産物”として、お年寄りたちは戦前の暮らしぶりを懐かしそうに語ってくれた。「この思い出話の世界を絵にしたい」と強く感じた。
 木製の灯台や塩づくり、麦の収穫、くば笠の構造、サワラ漁の様子、子どもたちの遊び-。スケッチブックを片手に島のお年寄りに話し掛け、聞いた話を絵に描き起こし、思い出を具体化していく。描きためたスケッチは膨大な量だ。
 来年4月、沖縄に移住して10年の節目に、那覇市の桜坂劇場で展示会を開く。
 島内でも絵を展示し、その後は市立久高小中学校に絵を寄贈する予定だ。
 「どのように生まれ、どのように一生を終えるか。最終的には昔の島の人の一生を描きたい。これからも島に腰を据え、描き続けたい」と笑顔で語った。
 山崎さんのホームページはhttp://yamazakinorikazu.com/
(内間安希)