復興願い「執心鐘入」 宮城・多賀城市で組踊特別公演


この記事を書いた人 志良堂 仁

 【宮城県で池田哲平】東日本大震災からの復興を祈念した組踊の特別鑑賞会が27日、宮城県の多賀城市文化センターで開かれた。会場には多くの観客が集まり、伝統組踊保存会による演舞に見入った。最後に団長で人間国宝の照喜名朝一さんが、宮城県松島一帯に伝わる民謡「さいたら節」を歌い、会場全体で一緒に歌い出す場面もあった。

東日本大震災からの復興を祈念して開かれた組踊「執心鐘入」の一幕=27日、宮城県の多賀城市文化センター

 震災から5年の節目となった公演の演目は玉城朝薫の代表作「執心鐘入」。宮城県で初めて組踊が披露された1999年と同じ演目となった。会場には初演時に携わった宮城学院女子大名誉教授の犬飼公之さん(72)も足を運んだ。犬飼さんは「震災の傷が癒えたとは言えないが、震災前と同じ演目を見直すことができたのはうれしい」としみじみ語った。
 名護市出身で宮城県人会の塩浜康輝会長(75)は、会場の市文化センターに一時避難した経験を持つ。塩浜さんは「宮城県にはまだまだ復興できていない地域は多い。伝統文化は『心のケア』になる」と語り、ふるさとを思い出しながら見守った。