孫の成人、花織で祝う 病越え4着目制作 読谷の宇座さん(83)15年前から


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
読谷山花織を着る(左から)福地瑠梨加さん、宇座詩音さん、宇座澄さん、仲吉梨江さん、外間鈴音さん(美容室&フォトスタジオ「ホワイトリバー」提供)

 【読谷】沖縄県の読谷山花織事業協同組合(読谷村)の宇座澄さん(83)は15年前から成人を迎えた孫娘に読谷山花織の振り袖を作り、4人の孫娘にプレゼントしている。孫たちは1月、宇座さんの85歳のトゥシビー(生年祝い)にその振り袖を着て一緒に写真撮影をし、感謝の気持ちを表した。宇座さんは脳出血や娘との死別などの困難を乗り越えて4人の振り袖を制作した。孫たちは「愛されていると感じる。同じように私たちもおばあちゃんを大切にしたい」と話している。

 振り袖は13メートル以上の生地の長さが必要。宇座さんの振り袖は、読谷山花織に特徴的な「手花織」などの繊細で華やかな技法を駆使している。1着分の一反を織るのに4~6カ月ほどかかる。組合内でも「手間が掛かるので、4人に作ったという人は今まで聞いたことがない」との声が上がる。

 初孫だった仲吉梨江さん(35)=北中城村=が成人する時に「織れるのだから、かわいい女の子に着てほしい」とピンクの振り袖を贈った。「そうしたら次の子にもあげたいと思って」と、続けて川満絵梨菜さん(27)=沖縄市=と福地瑠梨加さん(25)=読谷村=の振り袖も制作。だが4人目の宇座詩音さん(22)=米ロサンゼルス在住=が成人を迎える前の2014年、脳出血で倒れて3カ月入院した。

 「左半身が動かせず、申し訳ないけど渡せない」。一度は詩音さんに織れないと伝えていた。詩音さんは寂しい気持ちが残りつつ、仕方がないと諦めていた。だが、宇座さんは「一人だけ渡さないわけにはいかない。リハビリを兼ねて頑張ろう」と一念発起。約半年かけて昨年1月に完成させた。

 詩音さんは「世界に一着しかない最高のプレゼントだ。喜びと感謝の気持ちしかない」と話し、宇座さんの生年祝いにみんなで記念写真を撮ろうと企画した。

 宇座さんは写真を見て「本当にうれしかった。本当に自分が全部やったのかねと驚いた」と笑う。7年前、長女・敬子さん(享年52)を亡くし、ずっと落ち込んだこともあった。「つらい時も織物があったから生きてこられた。織物に支えられている」と語り、今日も機織り機に向き合っている。(清水柚里)