沖縄の心を遺産に サンパウロで新報移動編集局フォーラム


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100年先のブラジル県系社会について活発に意見を交わした琉球新報移動編集局フォーラム=26日午後(日本時間27日午前)、ブラジル・サンパウロ市のブラジル沖縄県人会館

 【サンパウロ26日移民100周年取材班】琉球新報社は26日午後(日本時間27日午前)、ブラジル・サンパウロ市のブラジル沖縄県人会館で、ブラジル移民100周年を記念した琉球新報移動編集局ブラジルフォーラム「次の100年に向けて~県人社会の課題と展望」を開いた。

県系5人の登壇者は「日本語を話せない3、4世は沖縄文化への関心が薄い」などの課題を指摘。100年後の県人社会は「日本語が話せず髪や肌の色も変わる」と展望した上で「それでもウチナーンチュとしての誇りや魂は残る。その継承が大切」と訴えた。玉城常邦琉球新報社社会部長が司会を務めた。
 県人2世のリーダー的存在の上原テーリオ氏は「県人会は青年がいないと存続できない。若者にとって県人会が魅力的組織になるには、イベントで沖縄文化に触れる機会をつくったり、若者に催しを企画させ、責任を持たせたりすることが必要だ」と提言した。
 山里アウグスト氏は「100年先は日本人の風貌(ふうぼう)はどんどん消えるだろう。子孫末代に残せるのはウチナーンチュの誠の心だけ。沖縄に関心のなかった若者がその心に触れ『沖縄に行きたい』と言いだした例もある」と話した。
 上原幸啓(こうけい)サンパウロ大名誉教授は、県費留学制度について「文化学術交流だけでなく、母県とのつながりを強固にする手段」として制度継続と受け入れ枠拡大を求めた。
 与那嶺真次ワールドワイド・ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション・インターナショナル(WUBインターナショナル)前会長は「日本からブラジルへ25万人が移民したが、その後、35万人が日本へ出稼ぎに行った。日本へブラジルの文化を伝え交流する良い機会」と話し、交流促進が文化やアイデンティティーの継承につながるとの認識を示した。
 ブラジル大手新聞社オ・エスタード・デ・サンパウロ前編集長の金城セウソ氏は「沖縄県人は子孫に正直、誠、勤勉さ、家族を敬愛し、年寄りをいたわり、良い社会人になることを教えた。この教えこそが人生の宝で、子孫へ継承すべき遺産」と強調した。(新垣毅)