【キラリ大地で】カナダ・新屋敷和博さん(59) 国際ビジネスに飛び回る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
カナダで大型発電所建設に取り組むうるま市出身の新屋敷和博さん

 2006年7月、カナダ中部に位置するサスカッチワン州で、テレビや新聞の注目を集めた1500億円を超えるビッグプロジェクトの調印式が行われた。そのプロジェクトは「クリーン・コール・プロジェクト」と呼ばれ、未来思考の発電所建設である。サスカッチワン州政府やサスカッチワン電力公社の要人に交じり、調印を行ったのが、うるま市平安座出身で丸紅カナダ副社長の新屋敷和博さん(59)だ。
 「いつの日かこの広い海を渡って海外に行きたい」。今から40数年前、新屋敷さんは、平安座の明かりの消えた静かな浜辺から沖行く船のいさり火や、満天の星空を眺めながら、夢を抱いていた。
 学生時代から英語を得意としていた新屋敷さんは1976年4月、家族4人でカナダに移住。29歳だった。
 同年9月、丸紅カナダに入社。以来、重電機部門一筋。主にカナダ国内の電力公社、電力会社向けの国際入札などに参加し、電力発電所建設の仕事に従事。
 語学力と裏表のない誠実な仕事ぶりは、カナダ社会に深く受け入れられていった。
 新屋敷さんは現在、サスカッチワン州政府管轄のサスカッチワン電力公社と、大型発電所案件に取り組んでいる。
 新屋敷さんの住むブリティッシュ・コロンビア州は日本の約2.5倍の広さを持ち、カナダ国の西・太平洋側に位置している。反対側の東・大西洋側までは、4時間半の時差があり、飛行機でも6時間以上の距離である。
 新屋敷さんは、広大なカナダの全州を仕事で飛び回るだけでなく、アメリカ合衆国までも足を延ばす。2001年9月11日、米中枢同時テロ事件の1週間前には現場のマンハッタンにいたそうだ。「もし日程が変わっていたらと思うとぞっとします」と静かに語る。
 そんな国際ビジネスの中で生きている新屋敷さんだが、忙しい仕事の傍ら98年から2年間、カナダ沖縄県連合会、バンクーバー沖縄県友愛会の会長も務めた。
 身長160センチ、体重57キロと小柄な人だが、常に適切な指示を出し、難しく思える事でも短時間に解決。いつも場の雰囲気を和ませる存在でもあり、「わたしゃもう少し背が欲しい」などとゴルフの時などボールだけでなくジョークも飛ばす。
 今年は新屋敷さんにとってえと年で人生の節目を迎える。「沖縄の特に若い人たちの中から、自分の生きざまに共鳴し啓発され、世界の広い場所へ飛び出したいと思う人が1人でもいたら、自分の幸せとするところです」。新屋敷さんは今回のインタビューを受ける思いを語った。
 (奥間ひとみ通信員)