金子さん幻の「ふく笛」復元 CTで構造探る


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「ふく笛」の復元成功を喜ぶ金子晴彦さん=26日、石垣市の石垣焼窯元

 【石垣】石垣焼窯元の当主、金子晴彦さん(52)が、「幻の玩具」と呼ばれていた山口県下関市の郷土玩具「ふく笛」の復刻に成功した。製法が受け継がれていなかった「ふく笛」の構造を、コンピューター断層撮影(CT)など現代技術を活用して解明した。功績がたたえられ、金子さんの陶芸作品石垣焼二尺皿「海」と大角皿がこのほど、ふく笛と共に下関市立美術館に収蔵された。

 ふく笛はフグの形をした陶器の笛で、下関市出身の実業家、故・河村幸次郎が1935年に創案した。70年にグッドデザイン賞を受けるなど人気を博したが、制作した笛の多くが経年とともに破損し、現存するオリジナル作品は数点しかない。
 当時の制作者も見つからず、設計図もないため、「幻の玩具」と呼ばれる存在になった。これまで多くの陶芸家が復刻を試みたものの、制作したふく笛は音を鳴らすことができず、失敗していた。
 金子さんは河村氏の長女、美代子さん(70)らが約1年前に始めた復刻プロジェクトに参加した。大学教授や絵付け師ら30~40人が無償で協力し、ふく笛の構造を調べた。その結果、吹き口に竹をさして角度を調節する際、少しでもずれると音が鳴らなくなることが判明した。
 金子さんは吹き口にオカリナの構造を応用することで繊細な職人技がなくても制作できるように改良し、石こうの型を作製した。
 金子さんは「現代の最高の技術と伝統工芸の技術の応用でふく笛を復元することができ感無量だ」と話した。
 ふく笛と金子さんの作品は下関市立美術館開館30周年記念展「河村幸次郎と美術の世界」(11月14日~12月23日)で見ることができる。