【キラリ大地で】アメリカ/昌子・アガルト・伊波さん イラク復興に携わる


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国家公務員としてバグダッドに滞在する那覇市出身の昌子・アガルト・伊波さん=米国バージニア州

 いまだ自爆テロが続き、戦火が収まらないイラクの首都バグダッドにワシントンDCから派遣され、イラク復興に携わっているウチナーンチュの女性がいる。那覇市出身の昌子・アガルト・伊波さん(58)だ。米国防総省の職員として、イラクで学校や病院など公共施設の建設予算の配分などに携わっている。
 伊波さんは、復帰前、日本政府の地方法務局で不動産関係の登記などの仕事をしていた。国務省の役人だった夫と知り合い、25歳で結婚。夫の両親が住むハワイへ渡った。
 当時英語ができなかった伊波さんは、毎晩、義母から英語の特訓を受けた。「義母は英語だけでなくアメリカ社会で生きるための知恵をも教えてくれた。そんな教養ある義母に感謝している」と笑顔。義母の勧めで4年後に米国の国家公務員の試験を受けることにした。
 不安の中、臨んだ面接試験。幸運なことに担当面接官は、沖縄に駐在した経験があった人だった。「面接は、沖縄関係のよもやま話で終了した」と伊波さん。メリーランド州で陸軍関係の会計監査委員として第一歩を踏み出した。
 ところが、いざ仕事を始めてみると英語の壁にぶつかり四苦八苦の日々。契約書の内容がわからず、それが正確に支払われているかの監査ができなかった。家に持って帰り、夫の力を借りてなんとかこなしていった。大学にも通い、会計学、経済学なども学び努力を重ねた。
 1987年からは、外国での軍用地料などに関する会計に携わる。仕事ぶりが評価され、2005年からイラクへ赴任。半年の予定が2年がたった。
 伊波さんは、イラク復興建設プロジェクトに関する予算の割り振りを行っている。さらに、九人の直属の部下たちを指導する役割も担う。現在、警備強固なインターナショナルゾーンという施設に滞在。「仕事をしている建物への被弾はもちろん、迫撃砲やロケットが飛び交い、銃声、爆弾音は絶えず聞こえる。外出時は、軍服を着て、ヘルメットに防弾チョッキを身に着けるなど恐怖と背中合わせの生活」と話す伊波さん。けがをした兵士や民間人が毎日、ヘリコプターで病院に運ばれているという。さらに黒い煙を上げる自動車爆弾テロの現場も目撃した。
 同じく国家公務員である夫の転勤で、これまでに世界39カ国に滞在。その間一男一女に恵まれた。子供らはすでに自立。現在、夫もサダムフセインの故郷であるイラク北部のティクリートに派遣されている。「退職後は、ボランティアをして役に立ちたい」。最後に伊波さんは笑顔で語った。(鈴木多美子米国通信員)