【キラリ大地で・活躍する県系人】アメリカ/真喜志康稔さん(52)


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1100ドルの高値で落札された木工細工を製作した真喜志康稔さん

 「Makishi 50 Move Puzzle Box」という名称でオークションに出品された横13センチ、縦8センチ、奥行き10センチの木工細工が1100ドルの高値で落札された。製作者は、沖縄市越来出身で、ペンシルベニア州在21年の真喜志康稔(やすとし)さん(52)。真喜志さんは、建築の仕事に携わりながら自宅のキッチンをモデルショールームにし、高級家具、キャビネットを注文に応じて製作してきた。
 真喜志さんがそのパズル箱に着手したのは、1993年。工芸品として何かを作ってみたいと手元にあった日本の箱根寄せ木細工のからくり箱を参考にした。その箱は、7回の手順をふんでふたを開ける物で、接着剤だけで固定されていた。年中乾燥状態にある米国では、接着剤がはがれ箱自体がバラバラになる。真喜志さんは、8回の手順を踏んでふたを開けるからくり箱に挑戦しようとより細かい段や溝を作り複雑な仕掛けを考案。ほぞ式型を採用し、95年に乾燥に耐え、落としても壊れない緻密(ちみつ)な立体パズルのオリジナル作品を誕生させた。
 96年には、13回、18回といった難度を増す箱を作っていった。多くのマキシブランドのパズル箱愛好者たちからのリクエストでさらに難度の高い30回に挑戦。試行錯誤を重ね97年に成功させた。真喜志さんは「ハワイやアラスカなど全米から注文が来て、かなりの数が売れてヒットした。多くの愛好者から喜ばれ、全米各地からありがとうのカードが手元に届き驚いた」と当時を振り返る。
 真喜志さんは、東海岸の主要都市で催される優れた芸術家達の作品のみが出品できる大規模で格式のあるクラフトショーに厳しい審査後パスし定期的に参加している。特にニューヨークの会場には、世界各国から客が訪れ、真喜志さんの作品の愛好者は、米国だけでなく世界規模へと広がりを見せているようだ。そして、3年掛かりで成功させたマキシブランドの50回の箱。今年の1月26日、世界規模のオークションウェブサイトでその箱は、6時間後に1100ドルで落札されたのだ。
 真喜志さんは「クラフトショーでは、自分が作ったパズル箱を多くの人たちに楽しんでもらいたいと手軽な価格で提供していた。愛好者は、子供から大人まで幅広い。何年もかけて辛抱強く努力を重ねて成功させた作品が評価された事に大きな喜びを感じている」と力強い声を響かせた。これからは限定販売にし、高級木材を使用し、希少価値のある作品を手掛けていきたいと話した。
 最後に真喜志さんは、沖縄の若者たちへメッセージを託す。「一つの事をあきらめずに、コツコツ続けていけば必ず結果がついて来る」(鈴木多美子通信員)