【キラリ大地で】アメリカ/大見謝若奈さん 日本酒市場を積極開拓


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過去最大規模で行われた「酒フェスティバル」で流ちょうな英語で的確に商品説明をしていた大見謝さん(右)=3月22日、米ロサンゼルス

 国の主役は消費者。政治もビジネスも生活を豊かにするためという発想に基づいて物事が動くアメリカでは、よいモノやサービスを提供する努力を続ける人間にチャンスが与えられていく。そんなアメリカで、日本酒を米市場に浸透させようと奮闘しているのが那覇市出身の大見謝若奈さん(29)だ。
 高級日本食レストランが次々と進出し、アメリカの和食ブームをけん引するロサンゼルス。3月22日に同地で開催された「酒フェスティバル」では、日本から蔵元180社が参加し、米流通業者や一般客ら約1700人が来場した。
 熱気であふれた会場で、人の波が途切れなかったのが大見謝さんのブース。こだわりの原材料や料理との相性などを的確な言葉で説明し、流ちょうな英語でしっかりと商品を印象付ける対応に、きっとベテランなのだろうと思って聞くと、「まだまだ新人」という答えが返ってきた。
 「父の仕事の関係で家に外国人が集まる環境で育ち、将来は英語を使う仕事がしたいと思い、那覇高校在学時に初めてフロリダに留学。その時、移民社会のアメリカで2カ国語を話す人はざらにいる。言葉は道具にすぎないんだ、と実感した」。しっかりした口調で語る大見謝さん。
 語学力は武器にはならない、ならば自分を表現できる技術を身に付けようと県立芸術大学に進学した。
 その後、イギリスのケント大学院で舞台美術を学び、卒業後、ロンドンの出版社に就職。海外事業部に配属され、ヨーロッパやアジアなど世界各国の展示会に参加した。
 積極性を買われ、海外進出を狙う明石酒類醸造株式会社(本社兵庫県)に転職。昨年4月にロンドンからサンフランシスコへ移住し、イギリスとアメリカを毎月往復しながら、需要が見込めそうな所に出向いては未開発市場をどんどん開拓している。
 アメリカのベンチャーキャピタル数はイギリスの6倍、日本の13倍。競争が激しい分だけ、マーケティングも重視される。
 「イギリスに比べ、アメリカはビジネス展開の変化速度も急速。どこへどう食い込もうかと試行錯誤の毎日だけど、努力が結果となって現れるのは楽しい」。
 アートとは質を異にする分野だが、「脳の違う部分を鍛えている感じ」と話す大見謝さん。
 「アート的クリエーティビティーはビジネスの分野でも発揮できる。人生に無駄な経験はないし、経験がより人生を豊かにする。いろんなことにチャレンジして、将来は沖縄でクリエーターたちが力を発揮できる器作りに貢献したい」。言葉に力を込めた。
 (平安名純代通信員)