台風8号、最強級 生活を直撃


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 数十年に1度の台風として、国内で初めて「特別警報」が発令された台風8号。先島を暴風に巻き込み、沖縄本島付近を通過した8日、県内は未明から暴風と大雨に見舞われ、倒木や家屋倒壊、農業用施設の損壊など、各地で深刻な被害をもたらした。

強風による転倒や飛散物が体に当たるなど各地でけが人も続出。20市町村で避難勧告も出され、終日混乱した。9日以降も暴風や大雨は続く見込みで、今後、土砂災害など自然災害の発生も懸念される。

<那覇・南部>倒木、車両を破損
 本島南部では、8日午前11時20分、南城市大里の県道17号で走行中の車両に木が倒れ、運転手が軽傷を負った。
 豊見城市饒波の土地改良区でマンゴーを栽培する大型ビニールハウスのビニールが突風で飛ばされた。出荷を迎えたマンゴーやサトウキビ、露地栽培野菜など農業被害の広がりが懸念される。
 南城市大里の県道48号では風にあおられたプレハブ小屋が車道を転がった。
 那覇市では8日朝、市松川の木造平屋建て食堂が強風にあおられて、道路を完全にふさぐ形で崩れた。
 正午ごろには、同市安里の栄町市場では市場の東口アーケードや市場内のアーケードが相次いで倒壊した。
 2年前から市場東口の付近で飲食店を経営する齋藤晃さん(69)は「心配で30分おきに市場内を見回った。倒れたのは残念だが、けが人が出なくて良かった」と話した。

<宮古>キビが倒壊 塩害懸念も
 【宮古島】8日未明暴風域に入った宮古島市。前日夜に初の特別警報や避難勧告が発令されたこともあり、普段にぎやかな商店や24時間営業のスーパーは閉店。市内は日中、緊張感に包まれた。
 暴風域を抜ける夕方になると農村部では農家が自分の畑を確認する作業に追われていた。サトウキビ畑と牛舎を確認に来た新里邦夫さん(57)は「畑の位置のせいか、サトウキビが倒れて大変だ。雨も少なかったので塩害が心配。雨が降ってほしい」と語った。
 宮古島と周辺離島を結ぶ船便は終日運休。池間大橋、来間大橋も通行止めになり、市民の足に大きな影響が出た。

<北部>川増水、道路迫る
 【北部】8日午後、風雨が強くなり、午後3時ごろからは特に海岸側から激しい波風が押し寄せた。名護市の西側や金武町、宜野座村など東海岸側でも満潮時刻近くになると川の水面が周辺道路へと迫った。
 同5時以降は一時視界が悪くなり名護市内では数十メートル先が見えない状況だった。東村慶佐次や名護市呉我、宮里、今帰仁村など各地の道路で街路樹がなぎ倒れされたり、冠水があったり車両が通行できない場所があった。名護市の商店街は終日シャッターが閉じ、人通りはなかった。
 名護市為又ではショッピングセンター入口付近に長さ5メートルを超えるトタンが飛んできて、午後6時すぎ、消防署員が処理した。

<中部>住宅半壊、車横転も
 【中部】中部地区では猛烈な風雨によって各地で建物や車両などの物的被害が相次いだ。読谷村波平では8日午前、直径約50センチ、高さ約10メートルの木が倒れ、根元付近に止めてあった車両を押しつぶしたほか、村立古堅中学校では体育館の屋根が一部飛ばされた。
 沖縄市諸見里で瓦屋根の木造住宅1棟が半壊したほか、市大里でもプレハブが半壊した。宜野湾市野嵩でも強風にあおられた軽乗用車1台が横転した。その他、店舗のシャッターや貯水タンクなどが飛ばされる被害も各地で確認された。
 東海岸地域では街路樹の倒木や冠水が目立った。うるま市勝連南風原の県道16号ではガジュマルの木が倒れ、中部土木事務所が約4時間交通規制を敷いた。

<久米島>未明からの強風 民家ガラス割る
 久米島町は8日午前9時20分、全3935世帯、8331人に避難勧告を発令した。町内2カ所に設置された避難所には、31人18世帯が避難した。
 未明から強風が吹き荒れたため、一部の橋が通行止めになり、一時約1400世帯で停電が発生した。同日午前11時には最大瞬間風速46・3メートルの強風が吹いた。
 民家の窓ガラスが割れる被害が発生したが、けが人は確認されていない。

走行中の車両に倒れた木。運転手はけがを負い、病院に搬送された=8日午前11時40分ごろ、南城市大里(仲本文子撮影)
暴風で半壊した住宅=8日午後6時すぎ、沖縄市諸見里