地域の子 笑顔に 花壇手入れ9年継続 崎原さん夫妻・桃原さん


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長年にわたり市営豊見城団地前の花壇や道路の清掃を継続する崎原栄一さん(左)、悦子さん(右)夫妻と桃原京子さん=20日、豊見城市

 【豊見城】周辺の歩道や道路にはごみ一つ落ちておらず、手入れの行き届いた花壇が道行く人の心を爽やかな気持ちにさせる―。約9年間にわたり、豊見城市の市営豊見城団地前の花壇や道路の清掃を継続する崎原栄一さん(65)、悦子さん(65)夫妻。共に活動するのが市の民生委員を務める桃原京子さん(65)だ。栄一さんは「清掃活動を続ける一番の理由は子どもたちのため」と思いを込める。

 近くにはゆたか保育園、豊見城小学校があり、団地前を通学する子どもたちにも笑顔の花が咲く。団地に住む3人は「いい環境を整えれば、子どもたちは素直に育つ」と口をそろえる。
 「最初はかなりひどかった」。崎原さん夫妻は、団地が建て替えられた2006年以前の旧団地時代を振り返る。歩道には草が生い茂り、団地内のあらゆる場所にごみが落ちていた。住人の中にはごみの分別を守らない人もいて、テレビなどの不法投棄もあった。そのころから地道に活動を続けてきた。
 景観を良くしようと取り組み始めたのは、防犯活動がきっかけだ。一番荒れていたのは08年。団地は非行青少年らのたまり場となっており、暴走族の集会場所でもあった。栄一さんは「毎晩が追い駆けっこだった」と振り返る。たばこ、酒盛りは当たり前。注意すると仕返しに車の一部を壊されたり、少年たちに囲まれたりもした。手入れしてきた花壇の花を踏み荒らされることもあった。
 しかし、どんな悪さやいたずらに遭っても、根気よく対話を続けた。
 栄一さんは「引いたら駄目。徹底的に対話する」、悦子さんも「見て見ぬふりはいけない」の態度を貫き、少年たちを見守る活動を続けた。
 「きちんと手入れすれば、花は正直に咲いてくれる」。栄一さんは色鮮やかに咲く花々を横目に、これまでの日々を振り返る。「やんちゃだった子も、今ではみんな、いい大人になっているよ」と笑った。