父の思い継ぎ非戦の舞 平和祈念像に奉納へ


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父が制作した平和祈念像の前で琉球舞踊を奉納する山田多津子さん(中央)と孫の山田玲子さん(右)と石川詩子さん=5日、糸満市

 【糸満】糸満市摩文仁の平和祈念堂に安置されている平和祈念像の制作者である故山田真山さんの娘・山田多津子さん(74)が、真山さんの孫に当たる山田玲子さん(49)と石川詩子さん(47)と共に、6月22日に同祈念堂で開催される「沖縄全戦没者追悼式前夜祭」で琉球舞踊を奉納する。

ことしは戦後70年と真山さんの生誕130周年の節目の年。多津子さんは父から受け継いだ平和への思いを胸に、平和祈念像の前で祈りの舞をささげる。
 沖縄戦時、4歳の多津子さんは家族と共に北部の山中に避難した。食糧がなく、真山さんが米軍の攻撃がやんだころを見計らって浜辺で海水を炊いて塩を作り、芋や米と物々交換した。ソテツで食中毒を起こし、顔がぱんぱんに腫れた父の姿を今も覚えている。
 真山さんが平和祈念像の制作を始めたのは1958年、72歳のころ。多津子さんは高校生だった。「戦没者の魂を供養する場をつくりたいという思いが常にあったと思う。いつ寝るのかと思うほど、制作に力を注いでいた。私も平和祈念像と共に育ったという特別な気持ちがある」と語る。
 戦後70年の節目に、平和祈念像の前で踊ることについて「不思議な縁を感じる。父の願いである戦争のない豊かな世になるようにと祈りを込めて、精いっぱい踊りたい」と話した。
 前夜祭では、琉球古典音楽野村流保存会の勝連繁雄会長がこの日のために手掛けた創作舞踊「寂静(じゃくじょう)」を披露する。(赤嶺玲子)