【キラリ大地で】アメリカ/安富ジョージ康夫さん 難関越えビジネス拡張


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ロングビーチで海上貨物コンテナ輸送などを扱うビジネスを展開する金武町出身の安富康夫さん(左)と社長を任された息子のジョンさん

 カリフォルニア州南部の港湾都市、ロングビーチで22年にわたり海上貨物コンテナ輸送や営業倉庫を扱うビジネスを展開するウチナーンチュがいる。金武町出身の安富康夫さん(59)=オレンジ郡在住=だ。
 社長職を息子に任した現在でもで大型トラックを運転し、23人の従業員とともに働く。バブル期後の難関を乗り越え、ビジネス拡張してきた安富さん。人生に対して、さまざまな意見を持つ理論家であり、地元の日系新聞にエッセーを書くなど文筆家としても知られている。また剣道5段でけいこにも汗を流している。
 北部農林高校を卒業した安富さんは1969年、ロサンゼルスに家族で移住。移住後は庭園業に従事した。74年にはアメリカ郵政公社の下請け会社に採用され、大陸を横断するトラック運転手となったが、降雪時の運転経験がないことから解雇された。同年、中古トラックを購入、アメリカ人が経営する海上コンテナ輸送会社に就職した。
 78年には、海運関連の会社に転職。働きながら、夜はロングビーチ市立大学で経営管理学を学んだ。
 85年、安富運輸倉庫株式会社(資本金20万ドル)を設立。現在農業をしている弟の完治さんとともに運送業を始めた。
 「私にとって仕事とは戦いそのもの」という安富さん。渡米前に父親の戦友から「アメリカ人と正面から戦って勝て、お前ならできる。アメリカにはウチナンチューも日本人も大勢いるだろうが、まずアメリカ人と一緒に仕事し、トップまでいったら、日本人とやれ」と言われたという。それが、現在の業界に入った動機につながった。その間、二男一女に恵まれた。
 安富さんは現在、資本金50万ドルで不動産投資会社設立を計画している。「卓越したビジネスセンスとイノベーション(改革)が必要だが、自信がある」と力強く語る。初年度の売り上げを、米国不動産の価格崩壊現象が起こっていることから低く抑え、500万ドルとする。まず小規模で手堅く事業を展開していく。
 故郷の沖縄には「IT技術を最大限に活用して沖縄から情報を発信し、日本本土を含めたアジア諸国に農水産物(食材)を提供できれば沖縄の経済自立も夢ではない。既存のビジネスに磨きをかけ付加価値をつけた事業が大切。そうすれば、農水産業でも立派なイノベーションとなる。やる気があれば誰にでもできる。あとは志、情熱、創造性と勤勉さの有無だと思う」と安富さんはエールを送っている。
 (当銘貞夫通信員)