【アメリカ】ワシントン沖縄会が「大阪のエイサー」上映 アイデンティティー考える


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エイサーを通じ、アイデンティティーを問う姿を追ったフィルムの上映会

 大阪に移り住んだウチナーンチュや本土生まれの2世、3世らがエイサーを通して自己のアイデンティティーを問う姿や彼らの思いをつづったドキュメンタリーフィルム「大阪のエイサー―思いの交わる場」の上映会がこのほど、ワシントンで行われた。ワシントンDC沖縄会(安里逸子会長)が主催した。

 フィルムは、民族音楽学を専門とする国立民族学博物館の寺田吉孝准教授=大阪出身=によって2003年に制作された。
 シカゴから駆けつけた寺田准教授は「ワシントン大学在学中に、沖縄音楽に出合った。帰国後、大阪在住の琉球古典音楽の師匠から三線を習い、民博では世界各地の文化を紹介していたが、地元大阪での沖縄の音楽を紹介すべきだと考えた」と制作理由を語った。
 寺田准教授は1999年に『越境する民族文化』という特別展で沖縄音楽を担当し、70年代、沖縄から大阪に来た集団就職者が熱い思いをもってエイサーにかかわっていたことを知ったという。
 「音楽を単にエンターテインメントとして享受する形が一般化する日本で、生活からわき出る思いをエイサーに託した若者がいたことを知ってほしい」と語った。
 映画は1975年に発足したガジュマルの会に触れ、「ヤマトの視線」「2世のジレンマ」「沖縄ブームとヤマトンチュの参加」「エイサーへの思い、沖縄への思い」のテーマに分かれ、それぞれの思いを語るインタビュー方式で構成されている。
 若者の1人は「大阪に住んでいて沖縄のルーツを知る原点となっている」と話し、片親が沖縄出身の女性は「自分の中の沖縄が爆発した。沖縄の血を感じ、感動した」と話していた。
 毎年、大阪、京都、兵庫、奈良、愛知、東京の沖縄青年会が一堂に会し5000人の人出でにぎわうエイサー祭りは、今年で33年目を迎える。
 上映会では質疑応答の時間が設けられ、寺田准教授も加わり率直な意見交換が行われた。会場からは「沖縄伝統芸能をつなげている大阪の若者の存在を知る貴重なフィルム。異国に住むウチナーンチュの心情をほうふつさせる」との感想が出ていた。
 一方、寺田准教授は「県外のウチナーンチュは、沖縄に対してさまざまな思いを持ちながら生活している。しかし、沖縄在住の沖縄の人たちには、必ずしもその思いが伝わっていないのでは」と話した。
 寺田准教授は「沖縄の人たちにも見てほしい」と沖縄でのフィルムの上映を期待している。
 寺田吉孝准教授の連絡先terada@idc.minpaku.ac.jp
(鈴木多美子通信員)