【アメリカ】「ニシムイ美術村」作品展 「命への喜びを共有」


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活発な質疑応答も行われたレセプション=14日、カリフォルニア大学バークレー校

 米軍占領下の沖縄で、美術を通してひとつの時代に立ち会ったアメリカと日本の画家たち、そして当時の沖縄で学生時代を過ごした米市民たちが集まった「ニシムイ美術村」の画家たちの作品展「生きるために描く:1948―1950」のレセプション。

 米国カリフォルニア大学バークレー校東アジア研究所で14日、開催されたレセプションは、イラクで兵士が戦死するニュースが続くアメリカで、参加者らにさまざまな「問い掛け」を投げ掛けたものとなった。
 「戦争に勝った国、負けた国、という立場を超えて、当時のニシムイには、今、生きているんだ、という命への喜びがあふれていた。そのころの思い出をスタインバーグさんたちが今でも大事にされているのは、きっとそういう喜びを共有していたからではないでしょうか」。レセプションで講演した琉球大学名誉教授の安次富長昭さん(76)の言葉に大きくうなずく当時軍医として沖縄に駐留し、ニシムイ美術村に出入りしていた医師のスタンレー・スタインバーグさん(84)。
 「ニシムイの作品展示会をしましょうと初めてジェーンに言われた時、見に来る人なんているのだろうかと疑問に思った」というスタインバーグさん。「私自身、60年たって初めてあの時代の意味が理解できた。彼らの作品は、今を生きる私たちに新たなメッセージを投げ掛けている」と語った。
 今回の作品展を企画した医師のジェーン・デュレイさんはスタインバーグ氏や安次富氏らから感謝の言葉を贈られ、涙を流していた。クバサキ・ハイスクールの同窓生ら14人(1966年度卒業生)は「彼女を誇りに思う」とその功績をたたえていた。同窓生の1人は「沖縄にこんな戦後があったなんて知らなかった。ジェーンの情熱は、時代を検証する意義を教えてくれた。私たちにできることはまだたくさんあるのでは」と語った。
 今まで語られることのなかった声をひとつの形にした今回のニシムイ展は、アメリカで新しい問いを投げ掛けた。
 (平安名純代通信員)