【アメリカ】若者主導で沖縄戦体験保存計画始動 北米沖縄県人会


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講習会でビデオを見ながら取材技術について学ぶ参加者ら=5日、ガーデナ市の北米沖縄県人会館

 北米沖縄県人会文化部(天願愛子部長)はこのほど、北米に在住している70歳以上の沖縄戦や移民体験者の経験を記録する「オーラル・ヒストリー・プロジェクト」(口述歴史保存計画)を発足。5日、ロサンゼルス近郊ガーデナ市の北米沖縄県人会館で講習会を開いた。

 講習会では、約10人の参加者らに、同プロジェクト委員のヒロシ・ヤマウチさん(29)が計画の趣旨などを説明。講師として招かれた非営利団体「JAリビング・レガシー」のマキ・ヤマシロさんが、インタビューに関する基礎知識などを指導した。
 同プロジェクトは、「日ごろ、話を聞く機会のない祖父母や父母の貴重な体験を受け継いでいきたい」と言うヤマウチさんの提案で、県人会が協議し5月に正式承認した。プロジェクトを推進する委員会も組織され、今月から本格的に始動した。
 同計画は沖縄からの移民史保存が狙い。1世や2世に体験を語ってもらい、その模様をテープにとり、一般閲覧用に県人会館の図書館に納める。また内容を筆記しデータベース化して、インターネット上で公開する。当面は、1カ月に2人の取材を目標としている。
 米国の中でも移民の多様性に富むカリフォルニアでは、各移民社会の世代交代が進むにつれ、歴史保存の重要性が叫ばれてきた。動きは全米に波及し、各非営利団体などで歴史保存運動などが活発化している。
 ロサンゼルスの日系社会でも100周年の記念行事などを機に歴史書を出版する県人会などがいくつかあるが、若い世代が主導しプロジェクトを立ち上げたのは沖縄が初めて。
 講習会では「たくさん話が引き出せるように取材前にしっかり調査する」「高齢者の場合は疲れやすいので、相手のペースを気遣うことが大切」などのアドバイスを参加者らが熱心にメモする姿が見られた。
 ヤマウチさんは「ボランティア要員の獲得」が当面の課題とし、「先祖の苦労があるから今の私たちがある、と伝える大切さに理解を示す若い人たちは多い。これから口コミやメディアを通じた呼び掛けを展開し、ボランティアの輪を広げていきたい」と語った。次回の講習会では、証言を記録する大切さをテーマに扱ったドキュメンタリー映画も鑑賞する予定。
 (平安名純代通信員)