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「実演家が技芸磨くために」仲嶺良盛さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 3 >


「実演家が技芸磨くために」仲嶺良盛さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 3 >
この記事を書いた人 琉球新報社

仲嶺良盛 – Yoshimiri Namamine – 琉球古典音楽演奏家 / ウザシチラボ理事

沖縄県出身。沖縄の伝統芸能・組踊(くみおどり)を次代へ伝えるため、歌三線の演奏家として活動している。ウザシチラボでは、伝統芸能の新しい楽しみ方を提案すべく、ワークショップや演奏会を開催。自身がディレクターをつとめるNHK「沖縄の歌と踊り」では、映像を通して芸能の魅力を伝えられる方法を模索している。

 ―実演家の立場で問題解決に取り組んでいるそうですが、芸能の分野にはどのような課題があるのでしょうか。

 実演家が芸能活動(稽古/舞台)にかける時間を取りづらい環境にあります。1公演あたりの出演料を増やすことが課題です。

 ―問題意識を持ったきっかけは。

 きっかけは2022年、国立劇場おきなわ組踊研修を修了したメンバーで構成される組踊の実演団体「子の会(しーのかい)」の運営を引き継いでからです。年齢は20〜30代と組踊界の中では一番若手の団体ですが、会員の多くがコンスタントに活動できていないことを知りました。それはなぜだろうと考えたのが意識を持った経緯です。

 子の会の活動は、県内外での公演やワークショップなど年に30件ほどあります。特に学校での芸術鑑賞会が多く、公演は主に平日の午後になり、県外学校での実施となると2日〜5日間ほどのツアー公演となります。会員の中には、私も含め芸能活動とは別の職業に従事している方も多く、上記の活動内容では他職業の有給休暇等を調整しないといけない状況にあります

 また、師匠方からは稽古不足を指摘されることも多い状況です。舞台数が多くなっているが、仕事との兼ね合いで稽古時間を削り舞台に出るという現状があるのではないかと感じています。そこで、出演料をはじめとした芸能活動の収入で生活ができるようにし、多くの実演家が技芸を磨くことに集中することができる環境を作りたいです。

 ―そのために取り組んでいることを教えてください。

 行政関連の仕事で行う公演事業は年度末が支払いなのですが、「子の会」では翌月払いにして出演者に報酬がなるべく早く届くように資金繰りを改善しました。NHK「沖縄の歌と踊り」の番組企画・制作に携わり、公共放送を通して沖縄伝統芸能の魅力がより伝わるよう日々試行錯誤しています。

 球陽フィルム合同会社を設立し、伝統芸能のプロダクションとして動き始め、那覇市の事業をはじめ芸能事業に関わり、予算組みの時点から調整交渉できる場所に行こうとしています。

 ―これから目指すところを聞かせてください。

 多くの実演家が技芸を磨くことに集中することができる環境を作りたいです。どんな土地にも歩んできた歴史があります。その土地が歩んできた歴史を大事にするような沖縄であってほしいです。文化芸術を観光資源として消費するのではなく、10年後、20年後にどう繋いでいくのかを一番に考えて動く沖縄です。