【前編】ガラケーを愛用するYouTuber<まーちゃん>「お笑い米軍基地」に続く新たな挑戦はじめます! ◇沖縄芸人ナビFILE.16


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お笑いの枠を超えて、文化・社会活動ほか多方面で活躍している「まーちゃん」こと、小波津正光(こはつ・まさみつ)さん。企画・脚本・演出を担当し、毎年6月23日の「慰霊の日」前後に新作を発表する舞台『基地を笑え!お笑い米軍基地』は、県内外で話題になる注目の公演。平和学習につながると学校や団体から鑑賞会のオファーが入り、講演会も同時開催する機会が多いそう。また、琉球新報と週刊レキオ紙面での連載コラムもおなじみですね! 実はまーちゃん、この秋から新しい挑戦を始めるそうで・・・情報を聞きつけたナビゲーターの「初恋クロマニヨン」松田正(まつだ・しょう)さんが、会いに行きました。聞き役に徹していた松田さんですが、どんな話になったのでしょうか!?

(執筆:フリーライター・饒波貴子)

「沖縄芸人ナビ」は4月から「週刊レキオ」(毎週木曜発行)と連動。毎月第1週目のレキオで関連記事が読めるようになりました。ぜひご覧ください。

FECオフィス(http://www.fec.okinawa)所属の、「まーちゃん」こと、小波津正光さん(左)。ナビ芸人のよしもとエンタテインメント沖縄(http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/)所属の松田正さんは、「まーちゃんさんは、尊敬している先輩の一人」と語ります。

ガラケーだけどスマホネタ

松田ナビ:以前FECにいたころに、ネタを見てもらっていたのがまーちゃんさん。話したくてもコミュニケーション下手で、あまりしゃべる事なく在籍を終えてしまいました。今日は本当にうれしいです。

まーちゃん:年齢的な事もあったし、当時は先輩と絡む人じゃなかった! 話を聞いてくれるそうで偉いよな。

松田ナビ:若くて反抗期みたいな感じだったので(笑)。根本的な性格は変わりませんが、沖縄のお笑いの先輩方は僕にとって特別な存在です。まーちゃんさんはSNSをやっていませんが、近況を広めるために始めようと思いませんか?

まーちゃん: 今年ガラケーから新しいガラケーに機種変更したよ(笑)。SNSは、みんな自分のアピールに一生懸命で、他人の反応を気にしてしまうし面倒くさい。人から影響受けてトリッキーなことを考えてしまって、ずっとSNSを見てしまうでしょ。そこに時間を使う暇はないんだよね。

松田ナビ:分かります。僕もめちゃくちゃSNSが苦手で、告知をする程度なんです。

まーちゃん:フォロワーがたくさんいる友達を作るのが一番いいよ。自分がやらなくていいからさ(笑)。ありがたい事に俺のライブの告知などは周りがやってくれる。でも仕組みが知りたくてSNSの勉強はしているし、LINEやiPhoneのコントも作ってみた(笑)。使った事ないから客観的に見れたりするよね。

スマホを持って運動会に行く人は、写真や動画を撮るためスマホを見ながら応援している! 夕日が見えるカフェでもスマホの画面を見て「きれい」と言って、写真を撮っている。そうじゃなく、みんな目の前を見ろよ! 自分の目で光景を見て心に刻み込むのが大事。俺たちみたいにネタを創作する者は特にそうだと思う。気持ちを記録するのはいいと思うのでブログはやっているけど、アップ作業が上手く行かずに手書きした物をアップしている(笑)。

松田ナビ:アナログですね(笑)。芸人さんはSNSをはじめいろんなところで自分を表現する時代ではありますが、面白い事をSNSに書いていたらもったいないと思えます。まーちゃんさんは舞台で全てを発散する考えですか?

まーちゃん:そうだね。舞台があるから生きていけるし、他で小出しにしていたら舞台で爆発できない。4年前にガンで入院してからはいつ死んでもいいと思ってきたので、舞台で全てを吐き出している。一緒にやる芸人に引かれたりするけど(笑)。自分の思い通りに編集・公開できるSNSで発信してフォロワー数を集めたら、ひと仕事して有名になったような錯覚を起こしてしまう。

俺たちがやるべきなのは、目の前のお客さんを喜ばせる事じゃない!? どうやって人の心を震わせお金を払ってもらうのかという事じゃないのかな〜。例えばSNSで見られるような事をしても、お金はもらえないよ。「ここでしか見られない物だからお金を払うしかない!」って思わせる事が重要だと思うんだよね。俺はSNSを使えないし、影響されるとモチベーションが削られてしまう気がしてやっていません。

マネージャー・スタッフと共にYouTuberに

松田ナビ:SNSをやっていない理由、よく分かりました(笑)。最近YouTube配信を始めましたがきっかけは?

まーちゃん:自由なはずのYouTubeに不自由さを感じたのと、配信してくれるマネージャーがいるから(笑)。時代にフィットした動画を上手に配信している方は多いですが、評価されている動画の中には、面白いとは思えないものもあるんだよね。刺激を与えるために見やすく編集してある動画なのに、惑わされて見ちゃう現状だから、レベルが下がっていくと思えて仕方ない。だから俺が感じる手軽なイメージでYouTubeをやりたい。芸人さん同士でやらず、面白い経歴を持つマネージャーと技術スタッフの女性と3人で、新しい何か生まれるはずと思いスタートしました。

『まーちゃんねる沖縄』の配信の様子

松田ナビ:芸人さんとはあえてやっていないんですね。

まーちゃん:そう。芸人同士の閉塞感ってない!? 初恋クロマニヨンもそうだろうけど、試行錯誤をしつつも結局俺たちはレールの上に乗ってしまう部分があるわけさ。芸人が増えて、賞レースもいいけど同じようなビジョンで冠番組持って売れて・・・ってなるとみんな一緒。隙間をつく存在の芸人が優等生になっている。もっと言えばゴキブリみたいに上手く生きていくのが芸人だったはずなのに、権力を持つ側になっちゃったのよ。いい物食っていい車に乗っている富裕層の芸人の話をみんなは聞きたいのかな!? 俺は聞きたくない訳さ。「こんなに太っているコイツは、稼いでいいの食ってるんだろうな〜」とか思う。逆に俺は「痩せすぎてるこの人って何?」って思われて、話を聞いてもらえなくなるかもしれないけど(笑)。

松田ナビ:そういう現状はありますね。理想の芸人像をイメージして見た目も意識していますか?

まーちゃん:している。芸人はハングリー精神が大事。歴史上では権力者に飼われる芸人もいたし、見方を変えると最下層から見える出来事を笑いに変えていく方向もある。芸人が裕福になったら、自由だったのが守りに入りテレビに出られなくなるとか考えてしまう。俺もそうなるだろうから、みんながやっていない事をやっていきたい。

沖縄は存在自体がお笑いだ!

松田ナビ:仕事で潤いつつ最下層にいるのが芸人だという思いから、ジレンマは生まれませんか?

まーちゃん:ジレンマはある。全力でゴキブリみたいに生きつつ(笑)、芸人らしい精神を持つ感覚がいい。反発心ではなく客観的でいたい。今は芸人が芸人を客観視できず、サラリーマン化してきているんじゃないかな。サラリーマンを目指すのならば、芸人じゃなくてもいいんじゃないって思う。

俺は最初内地で沖縄ネタをしても全然ウケず、芸の未熟さもあって仕方なく内地に合わせたネタをやり始めた。ちょっとずつウケ始めたけどなんか違和感があって、しゃべり方をウチナームニー(沖縄の話し方)に戻してまた沖縄的なネタをやった。俺は沖縄の人間だし、生きてきた物を出すしかないと思ったんだよね。それが伝わっていき、『お笑い米軍基地』を作った理由のひとつになった。

沖縄芸人として東京でやるのもいいけれど、沖縄の芸人が沖縄でやらんとどうするば〜!? 沖縄を題材に地元で根を張るのが当たり前って、ようやく気付いたわけ。NHKドラマの『ちゅらさん』で沖縄が注目されるようになったころだね。俺たち世代は本土に憧れる面もあり劣等感もある。ナイチャーには負けたくないけど、やっぱり頭いいな〜って思ってしまってた(笑)。でも内地に出て沖縄の良いところと悪いところに気づき、アイデンティティーを大事にしたい気持ちも生まれ、戦争と米軍基地をようやく意識したよ。

松田ナビ:「リアルな沖縄をお笑いにしたい」と思うようになりましたか?

まーちゃん:うん! 「沖縄の人が生きてるだけでお笑いやしぇ〜、米軍基地問題なんてコメディーだ」って思ったね。それを大げさにして舞台に乗っける、俺たちができるお笑いが見つかったんだよね。

松田ナビ:下の物が上の権力を笑うコメディーですね。

まーちゃん:そう、縦の笑い。でも横の笑いもあるから、芸人としての生きざまをどこで見せるか、沖縄の芸人と名乗る以上はどうしていこうかと考えた。喜怒哀楽の中でいうと、自分のDNAにある怒りと哀しみをお笑いに変換しようと決めた。土地に根差しているエイサーなどの伝統芸能もやるべきだと思う。今の芸人は柵の中で飼われて生きていきがちだけど、柵を飛び出していくべき! 柵の中にいる人からは「バカだな」って見られるかもしれないけどね。

旗揚け26周年記念公演でエイサーを披露するFECの芸人の皆さん

松田ナビ:柵の中の芸人さんも、「俺たちは公務員じゃない」という思いがあるはずです。まーちゃんさんのように柵を飛び越えるの、怖くないですか?

まーちゃん:怖いよ。だから時々柵の中に入ってエサを食べる(笑)。分かってくれる!?

松田ナビ:上手く立ち回るのが芸人なんですね(笑)。10年程前、「コントや漫才をやるだけが芸人じゃない。商品を作ってもいいし、何やってもいいから自分をさらけ出せ!」とまーちゃんさんが言っていました。僕はその時「何言ってるば〜」と思っていましたが35歳の今、意味が分かってきたような気がします。生きざまを見せないとお客さんは笑わない。言葉遊びでは笑わないし、もし笑っても表面的な事で終わります。

まーちゃん:ある意味人間は残酷で、エンターテインメントに刺激を求める場合もある。でも人がお金を払ってもいいと思う普遍的な物は、心震わされる物。感動すると人はプレゼントしてくれたり、一生ついて行くと思ってくれたりする。保護されているパンダのような存在が理想的だな。パンダになりたいけどスター性を持ち合わせていない俺は、野良犬みたい。だから芸をやらなきゃいけないけれど、芸にお金を払ってもらえない時代なのよ。パンダやトキみたいに保護されるのが賢い生き物。「生きていてくれてありがとう」って、お客さんに保護してもらえるようにならないと(笑)。

松田ナビ:お客さんに「食わしてやらなきゃ」って思ってもらえる芸人になる事ですね(笑)。僕自身「お金を払ってくれ」と言える芸や技術を持っていません。だからこそ、生きざまをさらけ出すしかないですね。

まーちゃん:裏を返せば、俺たちには芸がないんだよな。落語や伝統芸能は現代もフィーチャーされているけど、俺たちのお笑いは発想ばかりで下積みがなく、誰かから習った芸でもない。食える芸や磨く芸がないとバレて飽和状態になってきたよね。だから俺は真剣にエイサーをやる。芸人が伝統芸能を始めたと人の心が動いてお金をいただけるんだよね。『お笑い米軍基地』を初めたころ、こんな内容では仕事がなくなると言われたけれどそうならなかった。芸を持っていない芸人が多い中、転がりながらも見せる何かないと! あれ!? 俺が話したいのはこんな内容じゃないけどな(笑)。

<<後半に続く>>

【プロフィール】

★まーちゃん
本名:小波津 正光(こはつ・まさみつ)
生年月日:1974年8月13日
出身地:那覇市
趣味・特技:サッカー、料理 
※YouTube「まーちゃんねる沖縄」
https://www.youtube.com/channel/UCvEA5IJYGM5Mlez7tbHsxpA
毎週(木)21時~21時30分に配信中

★松田 正(まつだ しょう)/初恋クロマニヨン
生年月日:1984年8月22日
出身地:沖縄県読谷村 
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda


【インフォメーション】

♦水曜日は琉球新報社ロビーへ! まーちゃんが「週一お笑いライブ」開催

毎週水曜日、まーちゃんがお笑いライブを開催します。
マイク1本でトークする「スタンダップコメディ」や、YouTube番組を配信するなど内容盛りだくさん!
仕事終わりにふらっと寄れてお酒も飲める大人が楽しむライブを目指し、11月20日(水)スタートです。会場は「琉球新報社 1階ロビー」(那覇市泉崎1-10-3)。
時間や料金、最新情報など詳細はこちらをご確認ください。
 ↓
●まーちゃんねる沖縄 Twitter:@maachan582
●FECオフィス広報室 公式アカウントTwitter:@FEC_PR
 


 

♦よしもと沖縄花月フライデーナイトライブ(YOFライブ)ガチンコネタバトル 「よしもと-Uchinah-ランキング」

日時:11月8日(金)19:15開場/19:30開演
料金:前売り・当日ともに1000円 
内容:よしもと沖縄芸人全組出演!お客様の投票でランキングが決定します!
会場・お問い合わせ:【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 (マップはこちら)
TEL:098-943-6244
公式サイト==> http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/pc/

饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。