SNSで広がる「おきなわ、休業中。」市民たちがメッセージに込めた思いとは

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沖縄県内の新型コロナウイルスによる感染拡大に伴い、大型連休による来県自粛を呼びかける声が強まる中、とある一枚の画像がSNSを中心に広がりを見せている。時が止まったかのように人通りのない守礼の門や、国際通りといった沖縄を象徴する場所の写真。その横に浮かび上がるのは「おきなわ、休業中。」の文字。

この画像を作ったのは、さまざまな背景を持つ沖縄在住の若者10人で結成された「沖縄やーぐまいプロジェクト」。休業中という柔らかいキャッチーなフレーズが多くの人の共感を生んでいる。

彼らの取り組みに込めた思いや、活動を重ねる中で生まれる葛藤、今考えたい沖縄の未来、やーぐまいのセルフケアなどについて、メンバー各々にオンラインインタビューを行い連載として紹介する。

◇聞き手 野添侑麻(琉球新報Style編集部)



やーぐまい=家こもり



―SNSを通し「おきなわ、休業中。」というメッセージを発信している「沖縄やーぐまいプロジェクト」の皆さん。今日は結成のきっかけになった3人に活動について、深くお話しを伺いたいと思います。まずは、自己紹介をお願いします。

北:「北林大と申します。31歳です。普段はフリーランスで持続可能な社会づくり・食システムづくりを軸にした仕事をしています」

石:「石垣綾音です。30歳です。起業や創業相談をしながら街づくりに関わる仕事をしています」

秋:「秋山信樹です。DYGL(デイグロー)というバンドで活動しています。27歳です。東京育ちですが、生まれは沖縄。母が沖縄出身なので親戚が多くおり、沖縄と東京を行ったり来たりする生活をしています」

―「沖縄やーぐまいプロジェクト」は、どういうことをしている団体なんですか?

秋:「僕たちの団体名にもなっている『やーぐまい』とは、沖縄の島言葉で『家にこもる』ことを意味しています。コロナの流行が広がる中で、『大型連休に沖縄に訪れる人たちを減らすこと』また『県民にも外出自粛を呼びかける』という二つのことを伝えようと立ち上がったチームです。

状況が落ち着いた後は、補償の問題やコロナが発生したことで浮きぼりになった沖縄の問題を一緒に考えて議論し、発信していくことを目指しています」


島ならではの利点を活かして



―北林さんと石垣さんは、結成前の4月頭に沖縄県に対して、県内への入域制限と2週間の外出自粛を求めるオンラインの署名活動に取り組んできた経緯があると聞きました。

北:「僕と石垣は以前から交流があり、社会で起こっている出来事などについてよく話し合う仲でした。また、僕はイタリアで仕事をすることもあり、石垣はハワイに留学していた経験があるなど、海外各地のコロナによる悲惨な状況は常に入ってきていて、この先沖縄も似たようなことになるのではと危惧していました。3月に入って沖縄でも多数感染者が出始めたのですが、県の対応もゆるく、街の人の警戒心も薄かった。

『これでは県内でも感染が広がってしまうかもしれない』と焦りを感じつつも、島という特性を生かして、入域制限など早めの対策を打てばウイルスを抑え込むことは可能じゃないかと思ったんです。まずは、すぐにでもアクションを取るべきだと新聞に投書しました。そこでお世話になった記者さんと話す中で、『署名活動を行うのはどう?』というアドバイスを頂きました。署名活動なら、いろんな人に僕らが思っていることを伝えられるし、賛同してもらう仕組みを作れるんじゃないかと。これは良い手段だと思い、オンラインで署名を集めることにしました。一週間で7000人以上の方に署名をしていただき、沖縄県に提出することができました。その後、一連の活動を見てくれた秋山くんたちから連絡を受けて、一緒に動いていくことになったんです」

沖縄県における新型コロナウイルス感染拡大の対策強化を求めます!県民の命を守るため、入域制限と外出制限を!

秋:「僕は2月下旬に、香港と沖縄でライブの予定があり、香港経由で沖縄へ行く日程だったんですが、中国本土で感染が広がり、香港のライブがキャンセルになったんです。沖縄のみでライブを行い、一週間ほど滞在して帰ろうと思っていましたが、滞在期間中に東京でも感染者が増えてきて、3月以降のライブも全てなくなり、今後のスケジュールが白紙になりました。感染者の広がりを見ていると、今は飛行機での移動は控えるべきだと考え、しばらく一人で沖縄にいることにしました。

東京や海外にいる仲間たちの話を聞く中で、今の沖縄なら早めに対応したら状況は変わるかもしれないと思いはじめて、沖縄にいる友人たちと電話で相談していたんです。その中で大さんたちを紹介してもらい、一緒に活動を行うことになりました」

「おきなわ、休業中」誕生秘話



―なぜ今、皆さんは県内外の人にやーぐまいの重要性を訴えているのでしょうか。

石:「活動を始めた4月頭の時点では、県内の感染者が少なかったからこそ入域制限をして、クリーンな沖縄を保つことが出来れば、県内に限っては経済活動も社会活動も回復は早いんじゃないかという思いがありました。

多大なダメージを伴う自粛をいつまでやればいいのか分からないよりは、期間を決めて集中してウイルスがいない環境をつくる方がいい。県も外出自粛の呼びかけに踏み切って、生活がある中でも休業を決めた方々がたくさんいらっしゃる。その努力を無駄にしたくないから、短期決戦にしたいという気持ちです。

そこで県外から沖縄に訪れようと思っている方々に対しても、『今来ても、みんなお休みだよ』というのを分かりやすく伝えられるように、『おきなわ、休業中』というメッセージを、発信することにしました。

『来ないで』というような、強く拒否する言い方は本来はしたくないと思います。今は沖縄自体も受け入れ態勢が万全じゃないし、来てくれた人には心から楽しんでほしいのが県民総意の気持ち。そのために最適な状態になってからおもてなししたい、という気持ちを込めました。緊急事態宣言が続く間は、皆で我慢したら、県内での感染拡大を防げるんじゃないかと思い、改めてやーぐまい大事だよってことを訴えています」


マスクをするシーサー=4月28日 那覇市国際通り

―SNSを中心に呼び掛けを行っていますが、運用する中でポリシーはありますか?

石:「沖縄のコロナ関係のニュースや、観光地の休館情報を集めて発信しています。それと最新のニュースを追えるように、メンバー共有でニュースリストを作って情報をチェックしています。また投稿には『#沖縄休業中』『#やーぐまい』といったハッシュタグを付けています。

それと、『いろんな状況の人がいる』というのを分かって発信することが、すごく大事だと思っています。私たちが『沖縄に来ないで』と積極的に使わないのは、訪れる人には悪気がない人もいると思うから。だけど彼らに対して『今来ても楽しめないよ』という態度を見せ続けるのは、誠意があることだと思っています。常に新しい情報をオープンにしていくのも、その態度につながることだと思っています」

Twitter:@StayHomeOkinawa

誰かを傷つけているかもしれないという葛藤



―SNSの発信の他にも、ライブ配信を使ってメンバー内の議論の様子を配信する取り組みも行っていますよね。これはどんな狙いがあるんですか?

北:「いろんな葛藤の上に一般市民が行っている活動だということを知ってほしかったからです。僕らは感染症のエキスパートでもないし、経済学者でもないし、政治家でもない。だから何が正解か、何が最適なのかも実際のところは分からないです。団体内でも取るべき行動に優先順位がつけられなくて、毎日悩み続けています。だからこの活動も完全じゃないかもしれないし、僕らが何か発信することで誰かを傷つけてしまっている可能性も大いにあります。それでも何かアクションを起こして、発言しないと、このまま感染が拡大していくのを指をくわえて見ているだけになっちゃうから、それは嫌だと思った。だから、まず動こうと思いました。こういう葛藤の中で、ひとまずの僕らの答えとして行動しているので、その裏側を知ってほしいと思って配信を始めました。

僕らは、何かの権限や地位があってこういう事をしてるわけじゃない普通のいち沖縄県民。発信している内容は、どうあがいたって賛否両論ありますが、でも発信しないと、正解かどうかもわからない。だから、発信しているんです。そしてそれはきっと誰しもができるし、やっていいことだと思います。考えを発信することは、特別なことじゃない。それを伝えたかった。

だから僕たちを見て、社会に対して何か発信したいと思っている子たちに対しても、とりあえず動けば反応は返ってくるから、それを拾いながら進んでもいいっていう姿を伝えられる場になれると思ったことのも、議論を配信しようと思ったきっかけの一つです」


ライブ配信の様子。

各自の業界の現状について



―新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、皆さんの仕事や生活で、どのような影響がありますか?

石:「私は街づくりや都市計画の仕事をしており、地域と行政をつなぐワークショップやプログラムも企画運営していますが、コロナ禍ではイベントはオンライン上ではできないし、企業・創業支援の拠点もコワーキングスペースの施設運営が主なので、施設を開けられない中、この先どうするかという話をしています。でもすぐ仕事がリモート対応で継続できたのはラッキーだったところ。そうじゃなかったら仕事がなくて困っていたと思います。年度始めで、本来であればいろんな事業案が出てくる時期だけど、今年はどうなっていくか見通しもつかないので、その不安があります」

北:「僕は仕事で人や食が集まる場所などを主に扱っていますが、ここ数カ月で人が集まるイベントがどんどん中止になってしまっています。また、今の状態が続くと、企業や行政との連携事業ができなくなり、仕事がなくなっちゃう可能性もあるので不安ではあります。また家業で学習塾をやっているんですが、休校が継続し新学期が始まらないことが決まったことで、全部オンライン授業に移行しました。その準備は少し大変でしたね。今後公教育がどう展開していくのかも、注目ですね」

秋:「僕らミュージシャンは、直接的なライブができないことが大きいですね。人を集めること自体が難しい今、この先ライブやイベントのあり方は大きく変わっていきそうです。今後は音源制作や、配信をどう使うかがポイントになると思っています。ライブハウスといった場所を持っている人は、営業が出来なくても家賃などの支払わなきゃいけないお金は発生するので、かなりキツイと思います。政府から自粛要請を出す以上、そうした現場に対しての補償は必須だと業界全体で声をあげていかねばいけないと課題と考えます。

アーティスト自身も、CDといった音源が売れない今の時代に活動を支えているのはライブや関連したグッズの販売なので、その場を作れないのはかなりしんどい。僕のバンドも、配信一つとってもライブ配信をするだけなのか、それとも他に何か加えてできることがあるのかと、チームで話し合ってる途中です。音源制作も家でできる作業ですが、スタジオに入らないとしっかり録音ができないっていう歯がゆさもあります」

家にいるからこそ、コミュニケーションの重要性



―やーぐまい生活でハマっていること、また自身の気持ちの変化などはありますか?

秋:「家に一人でいても、プロジェクトの皆と日頃からコミュニケーションも取れているので、思ったことを話す場所があるのはありがたく思っています。こういうアウトプットできる場所がないと感情が積もっちゃって、メンタルの整理がつかなくなる。やーぐまい生活は自分の思ったことを話したり、表現する場所がないといけないと思いました。そういう場所があるだけで精神衛生は保てるかなと思います。音楽活動も、ひとまずは配信という形で行えているので、それなりに前進できている実感はあります。工夫して何かする余地があるのは楽しいですね。この生活が長期化するとまた新しい問題も生まれてくると思いますが、今のところ心も身体も健康的です。ぼちぼち運動もしなきゃなぁ…(笑)」

北:「ほとんどの仕事はオンラインでいけるなと思いました。今までフリーランスとしていろんなプロジェクトに参加していて、場所の移動が多かったんだけど、今はオンラインで対応できることがわかった。移動時間が減って、自分のリズムが作れるようになり、ずっとないがしろになっていた自分のことに時間が使えるようになったのがうれしいです。でもおいしいものを仲間たちと囲んで、ワイワイ食べられないのは結構苦しいな」

石:「私もあちこち動いていた人だから、こんなに家にいるのが久しぶり。でも家にいるからといって、部屋の掃除は進まないなと思っている最中です(笑)。私は家にいるからといっても、コロナ前に比べてやってることは変わらない生活をしています。むしろ忙しくなったかもしれないくらい。大さんが言うように、ほとんどの仕事ってオンラインでできるじゃんっていうのは実感しています。街づくりをやっている身なので街の方々のことが心配。この生活が当たり前になると今まで楽しんでいたことや、ストリートのカルチャー、偶発的な出会いが生まれないのがストレス。同じ人とばかりしゃべってしまいがちで、新しい出会いによって生まれる刺激がないのが嫌ですね。運動もしたいなと思っているけど、スケジュールが工面できていないのが悩みです」

―状況が落ち着いたあと、何か団体でやってみたいことはありますか?

秋:「今は大型連休に向けて外出自粛を行うことにフォーカスしていますが、状況が落ち着いた後は、コロナがあって浮き彫りになった社会の問題に対して、皆で考えていきたいなと思っています。今はずっと目を背けてきた問題が嫌でもあぶりだされている状態になっていて、そこに対して向き合って考えざるを得ない状態になっています。その状況は簡単にいいとは言えないけど、捉え方や動き方次第でこの先チャンスに変えられるのではないかと思っています。そのために考え、知恵を出し合うことができる場所作りをしたいと考えています。前から政治や社会問題についてフラットに話し合える場所があればいいなと思っていたので、まずはこれまであまりそういうことに触れてこなかった人も、安心して学んだり共有できる場所つくりのきっかけになればうれしいです」

石:「今日まで団体内でもたくさんの議論があり、私たちの中でもいろんな視点や考えがあります。そこもオープンにして、『いろんな意見の中から最善の道を探していけるんだよ』っていうのを見せていく場にしたい。このコロナショックがあって気づけた問題があるからこそ、そこに向き合って更によい沖縄にしていくには何が必要かを考えていきたいです」

北:「課題を今後どう乗り越えていくべきなのか、市民レベルでも話し合える空気感を醸成する一つのきっかけになれば嬉しいです。『持続可能な社会』というのを軸に活動をしている人間としては、利益追従型の消費活動がこの結果につながったと思っているので、これでいいのかというのを考えて受け止めながら次に進みたいです。そこは今後、配信やSNSの発信などで深く触れていきたいと思っています」

―最後に、コロナ後にどう変化した沖縄であってほしいですか?

北:「個人的に思うことは、元々沖縄には自然と共有する知恵が生活の中に織り込まれていて、そのことを先祖から受け継いできていたはずなのに、簡素化してしまっていた。なので、自然と共生するということに今一度目を向けて、この島が持続可能であることはどういうことなのか、どうしたら残していけるかを考えていけたらいいなと思います

今、コロナショックにより影響を受けているのは、『地域のコミュニティの中で暮らす』いうことから離れてしまったことが原因の一つになっていると思います。一人暮らしの年配の方や、学校が休校になることによって親の出勤が困難になるなど。これらについても、今後どう暮らしていくのか、沖縄としての課題でもあると思うので、社会全体でどう持続的に暮らしていくのかを考えて話し合える、そんな沖縄であってほしいなと思います」

石:「自分たちにとって大事なことは何か、この島で生きるというのはどういうことなんだろうというのを見つめ直して、しっかり考える人が多い沖縄になっていたいです。いろんな人と話して議論して、最適を探っていける雰囲気ができる社会になったらいいな」

秋:「今回コロナを取り巻く世界情勢を見ていると、国を通して国民を変えていくトップダウン的なやり方ではなく、国民がそれぞれのニーズを拾い上げて声を出し動いて、国を変えていく流れに変わっていくんじゃないかなという印象を受けました。沖縄は、コロナが起こる前から貧困や自殺率、離婚率など多くの問題を抱えていましたが、それは日本全体が抱えている問題をかなり抽出している部分だと思っていて、その問題にしっかり向き合って解決策を見つけることができたら、ロールモデルとして活かすことができるんじゃないかって思っていたんです。コロナが発生してしまって、沖縄でもその他多くの問題が発生し、一気に正面から受け止めて考えざるを得ない状況になりましたが、コロナを超えたあとに解決の糸口が見えている沖縄になって、それが日本全体にとっても希望になるような存在になっていたら良いなと思います」

聞き手・野添侑麻(のぞえ・ゆうま)

2019年琉球新報社入社。音楽とJリーグと別府温泉を愛する。18歳から県外でロックフェス企画制作を始め、今は沖縄にて音楽と関わる日々。大好きなカルチャーを作る人たちを発信できるきっかけになれるよう日々模索中。



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