えくぼママの中には育休中や現役の教員、元教員というメンバーが多数在籍しています。保育園、幼稚園、こども園、小学校、高校、特別支援学校、大学、専門学校…と学校の種類もバラエティ豊か。家族やダンナさんが教職員というメンバーもいて、意外にも教育事情に明るいえくぼ編集部です!
今回は公立認定こども園の保育教諭・Yukinoさんに、子どもの権利条約(以下「権利条約」)に関する話を聞きました。彼女は小学1年生と5歳のお子さんのママで、教諭暦は13年。那覇から国頭村に移ったYukinoさんが園の子どもたちと過ごす中で気付いたこと、そして、親として心掛けていることを教えてもらいました。
―職場では権利条約を学ぶ職員研修があるのですか?
保育現場に入ると必ず実践的な職員研修があります。児童福祉や権利条約の基礎は学生の頃に学びましたが、知識と実践があって初めて理解することができます。前にCAP(Child Assault Prevention~子どもへの暴力防止プログラム~)の方を講師に招いて、子どもの人権教育や、イヤなことには「NO!」と言うワークショップをやったこともあります。私は複数の公立幼稚園、こども園に勤務しましたが、どの園も子どもの権利を扱う研修には力を入れていましたね。
―子どもとのやり取りで印象に残っているエピソードを教えて下さい。
私がまだ新米教諭だった頃、両親が離婚してお父さんに引き取られた子がいたんです。その子は幼稚園に行きたいのに、お父さんは行かせてくれない。週1回となった登園が、月に数回となり、やがて1回も来なくなり…。私は担任として自宅を訪問し、登園させるようお父さんにお願いに行ったんです。そこでお父さんなりの事情があることを知りましたが、子どもの気持ちや参加する権利が、ないがしろにされていると感じました。
―こんな場合、幼稚園の先生としてどんなことができるのでしょう?
当初から園長に相談していましたが、行政と連携することで状況は大きく変わりました。要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」)※1の会議に参加し、その子にどんな支援が必要なのかを各専門家と話し合いました。療育センターのサポートを受けたり、クラスの子たちにも協力してもらったりするなど工夫を重ね、結果としてその子は幼稚園に来るようになったんです。要対協ではお父さんの支援にも取り組んでいました。先生としてできることは限られているけど、子どもに関わるさまざまな専門家が一緒に動いたことでこのケースは解決に向かいました。
―児童虐待が社会問題になっていますが、気になることはありますか?
直感として「あれ?」と感じる瞬間があり、実はそれが子どもからのSOSだったこともありました。ただ家族の形はそれぞれ違うので詮索はせず、子どもが安心できるよう一緒に過ごすことを私は大事にしています。子どもにとって安全な場、安心できる相手であるよう心掛けている一方で、気になる家庭があっても介入できないもどかしさはあります。虐待は子どもの権利侵害です。それを社会全体で共有し、権利条約の内容をもっと多くの人が知ったら、子どもの虐待やいじめは減ってくるのではないでしょうか。
―豊かな自然の中で暮らしている、Yukinoさんのお子さんについて教えてください。
国頭村に住む、うちの子どもたちは大自然が遊び場。やりたいこと・学びたいことが目の前にあるので主体性が育っています。1年生になった娘は学校から宿題を持たされるようになりましたが、やる必要性を感じないこともあるみたいで…。命令して「宿題をさせる」のではなく、本人が必要と思い自主的にやってほしいと考えています。娘が宿題を拒否する時は、なぜそう思うのかを聞き、提出しないとどうなるのかを推測させ、それでもやらない選択をした場合はそれを尊重します。担任の先生にも相談しながら、私が幼児教育の現場で実践していることと、わが子への接し方が矛盾しないよう心掛けています。
★注釈
※1 要保護児童対策地域協議会
虐待を受けている子どもをはじめとする要保護児童の早期発見や適切な保護をはかるために、関係機関がその子どもに関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくために設けられた地域協議会。設置主体は地方公共団体で、主な構成員は児童福祉に従事する関係者。(厚生労働省ホームページより抜粋)
★子どもの権利を考えるオススメ本
『こども哲学 暴力って、なに?』
著:オスカー・ブルニフィエ 訳:西宮かおり
出版社:朝日出版社
乱暴という言葉を多方面から捉え、問いを持って読んでいく構成。
子どもとの対話を通して、自分なりの答えを見つける力を養う本。
(えくぼママライター やけなみわ)
☆ プロフィル ☆
やけなみわ
神奈川県出身の二児の母。元編集者・ライター。現在は小学校のPTA活動を中心に、子ども食堂のボランティア、平和・環境活動、親子英語クラブの運営に携わる。趣味は観劇。旅行。スキューバーダイビング
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