陰謀論が猛威を振るう 誤情報に惑わされないために -モバプリの知っ得![128]


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先月27日、芸能事務所アミューズは昨年7月に亡くなった俳優・三浦春馬さんに関するデマ・誤情報に気を付けるよう公式サイトで呼び掛けました※1。自ら命を絶った三浦さんですが、「(アメリカの諜報機関)CIAによって殺害された」などの事実に基づかない情報がYouTubeを中心に投稿されているからです。こうした事実に基づかない、ハリウッド映画のような大きなストーリーを「陰謀論」と呼びます。今回、アミューズ側は誤情報を流している電子書籍やYouTubeアカウントを名指しで公開して、注意を呼び掛けています。

インターネット上における誹謗中傷、デマ情報について(2021年4月27日)
https://www.amuse.co.jp/info/20201020/

残念なことに陰謀論を信じ切っている人は公式である事務所の発表さえも「真実を握りつぶすために圧力をかけている」と解釈するでしょう。陰謀論は一度ハマると抜け出すのが難しいと感じます。例えば信じてもあまり害のない噂話や都市伝説が好きな方は多いでしょう。YouTubeでも都市伝説系は人気が高いジャンルとなっています。

最初は面白半分で見ていた無害な話だったとしても、何度も視聴することでYouTubeのおすすめ動画にどんどん登場してきます。次第に、通常のニュース動画と都市伝説の動画が同じ並びで表示され、何が事実なのか曖昧になるということです。気軽に見始めた都市伝説動画が、オカルト、そして陰謀論へと一本道でつながっていくのです。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

陰謀論はアメリカの選挙の時※2 にも大きな問題となりました。2016年の大統領選時には「候補者がとあるピザ屋の地下で、人身売買や児童性的虐待を行っている」とした話が広がって、信じた人がピザ屋に押し入って銃を発砲する事件も起きました。また今年1月には、前年に行われた大統領選が不正であるという説を信じた人たちが議会に押し入って、死者が出る事件も起きています。陰謀論というのは面白半分で終わらせていいものではなく、社会に対しての影響が出る恐れのあるものなのです。SNSやYouTubeを使っている以上、「おすすめ」のシステムでどんどん情報が偏っていくことがどの地域でも起きているのです。そうして広がった情報を信じた人たちの間で共鳴が起こり、「みんなが言っているから、真実に違いない!」という雰囲気を帯びてしまいます。

陰謀論に惑わされないためのポイントとしては、インターネットの仕組み自体が自分の興味ある情報が押し出されてくるので、そうした情報を多く目にした時には「全て正しいことではない」と認識することが大切です。こうした陰謀論にのみ込まれないためにも、「そうかもしれない」ではなく、「こういうことがあった」という事実をベースに考えを広げるようにしましょう。

※1 公式サイトで呼びかけ …アミューズは、事実に基づかない情報を載せている電子書籍・Webページなどを名指しで公開。「閲覧されることによる収益を目的としたものもありますので、くれぐれもお気を付けください」と呼びかけた。
※2 アメリカの選挙の時 …2016年、2020年のアメリカ大統領選挙の時にSNSで陰謀論が拡散。2016年は「ヒラリー候補がピザ屋の地下で子供たちを監禁している」という陰謀論が広がり、信じた男がピザ屋に押し入り銃を発砲する事件が発生した。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」5月9日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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