コロナ禍で困窮する人たちを支援 交流の場としても機能


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食で助け合いの輪を広げる
ゆいまーるの会

「ゆいまーるの会」のメンバーとボランティアスタッフ。前列左端が嘉手苅直美さん=那覇市の牧志公園(写真撮影時のみマスクを外してもらいました) 写真・村山望

生活に困っている人たちに食料品などを提供している「ゆいまーるの会」。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で打撃を受け、困窮する人たちを支援しようと始まった取り組みだ。食料配布の会場となる公園は利用者たちの交流の拠点にもなっている。代表の嘉手苅直美さん(66)は、スタッフと共に週2回、支援に奮闘している。

那覇市の牧志公園に早朝から人々が集まり始める。訪れるのは無料の食品などを受け取りに来る人たちだ。

公園にはシートが敷かれ、その上にレトルト食品、缶詰、米、お菓子、カップ麺などさまざまな食品が並ぶ。食品は那覇市などの助成金や企業・個人の寄付金で購入する他、「那覇市社会福祉協議会」「おきなわこども未来ランチサポート」などからの食品提供で用意されたものだ。利用者は配布された整理券の番号が呼ばれると列に並び、食品を3品選ぶことができる。その他、手作りのゆで卵やジューシー、パン、バナナ、時にはマスクなどの感染対策用品などの提供もある。

補助金や寄付で集まった食品

この活動をしているのがボランティア団体「ゆいまーるの会」だ。代表は嘉手苅直美さん。昨年6月から活動を開始した。嘉手苅さんは、それに加え、週末は那覇市内の困窮する子育て世帯32件に食料品を届けている。

生活困窮者のチカラに

デイサービスやこども園、福祉関係施設などを訪問するボランティア劇団「うちなー芝居お届け隊」の代表でもある嘉手苅さん。新型コロナウイルスの影響で活動が休止に追い込まれる中、「コロナ禍による生活困窮者が増えたと聞き、できることはないかと思った」。そんな時、耳にしたのがアメリカやタイで広がっていた「食品棚」のことだった。寄付用の飲食物を棚に置き、必要な人は自由に持ち出しができるシステムだ。そのアイデアをヒントに那覇市安里のカーゴス広場1階に食品棚「ゆいまーるボックス」を設置。自費で食料品を購入し、一人で活動を始めた。

配布前に打ち合わせをするメンバーら

当初は週20人ほどだった利用者は口コミで増加。昨年10月から牧志公園に会場を移し、週2回(火曜は女性、金曜は男性を対象)実施している。現在、毎週140~150人が利用し、年齢は20代~90代と幅広い。那覇市内在住の人が大半だが、糸満市や与那原町、浦添市からも訪れる。昨年の10月から取り始めた統計によると、延べ6802人を支援してきたという(2021年12月末現在)。現在はスタッフとボランティアが活動を支えている。

孤立防止としての役割も

会場は、利用者たちの交流の場にもなっている。嘉手苅さんは「半数以上が一人暮らしの高齢者。食料をもらいに来ながら、人とのつながりも持ってほしい」と力を込める。

「この活動は必要。『困っている』とあまり人に言わないし、誰に言っていいか分からない。でもここで食料を配布していると言えば来てくれる。昨年元気のなかった人たちが、今はみんな元気になっている」とほほ笑む。

列に並ぶ人たち。順番待ちの間、ボランティアがアンケートや困りごとなどの聞き取りをする

「お金と体力がある間は続けたい」という嘉手苅さん。現在受けているすべての助成金が2月末までに終わるため、新年度の助成金を申請中だ。「食料はまだまだ足りない。家にある食べない食品を捨てないで必要な人のために持ってきてほしい」と呼びかけている。

食品を受け取る人たち。利用者は「家計が厳しく本当に助かっている」(80歳女性)、「ここに来たら友達もつくれる」(70代女性)、「自分では買えないからありがたい」(65歳男性)などと感謝を口にした

助成金などの課題もあるが、「困っている人がいたら助けたい。正直疲れるときもある(笑)、でも待っている人がいると思えばやらないとという気持ちになる」という嘉手苅さん。スタッフやボランティアに支えられながら走り続ける。

(坂本永通子)


「ゆいまーるの会」食料配布

日時:毎週(火)(金)9:00~10:30
(雨天で中止の場合は(土)開催)

場所:牧志公園内(那覇市牧志)

内容:(火)は女性、(金)は男性対象。
家庭にある余った食品、生活必需品(洋服以外)、生理用品など(生鮮食品、アルコール、賞味期限切れの食料品を除く)の寄付を募集。

寄付は開始前に会場で受け付け。電話でも受け付け可 TEL 090-3793-7906〔嘉手苅〕
 

(2022年1月13日付 週刊レキオ掲載)