埋蔵文化財と地図 神村智子(沖縄県教育委員会文化財課)


埋蔵文化財と地図 神村智子(沖縄県教育委員会文化財課)
この記事を書いた人 佐藤 ひろこ
引率として参加した国際地理オリンピックでは、世界の同好の友人たちと出会い、各国の本物の文化に触れた=2015年、ロシア・トヴェリ

 私たちが暮らしている場所の地下には、昔の人がたてた建物などの跡(遺構)や、昔の人が使っていた道具(出土品)などが埋まっていることがあり、こうした場所を遺跡または埋蔵文化財という。

 その出土品を小学校の教室に持って行き「出前授業」を行ったことがある。まず、市内の地図から学校の位置を確認する。「いくつの遺跡があるかな?」「湧き水がいくつあるかな?」と3択クイズにワイワイと盛り上がった。

 遺跡の場所から「人気のある場所は今も昔も変わらないね」、100以上ある湧き水から「だから田芋が特産なんだ」といった気付きがあり、立地の良い土地条件とは何かを考えるきっかけになったようだ。そして、埋蔵文化財の「財」って宝物の意味なんだと捉えた児童らに、学校周辺にある遺跡から出土した土器や石器などを観(み)て触れて、それが何なのかを想像し話し合わせてみた。

 出土品からは、先人たちの知恵や技だけでなく、多くの魚やジュゴンの骨が出土することから豊かなサンゴ礁の海を、種から当時の植物が育っていた自然環境を、糞石(ふんせき)=うんちから当時の食生活や私たちと同じ生きた人間がそこにいたことなどが分かる。子どもたちは目をキラキラさせて、体感したことを豊かに発言する。出土品も子どもたちに触れられて喜んでいるように見える。時空を超えて現代とつながった瞬間である。

 さて、私たちの身の回りには、どのような遺跡があって、発掘調査から何が分かっているのだろうか。地図には史跡・名勝・天然記念物を表す地図記号が示されている。さあ、地図を片手に地域の文化財探検をしてみよう。時空を超えて先人たちに思いを寄せる。「温故知新」(故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る)。地図から未来へのヒントが見えるかもしれない。

(2016年5月20付琉球新報掲載)

神村智子さん

神村智子(かみむら・ともこ)
 高校教諭。身近なところから興味を持って多様な考え方を学ぶ地理教育を実践。2014年度より県立埋蔵文化財センター。地理的・歴史的に独自の文化を発展させてきた沖縄県の埋蔵文化財を活用した出前授業に取り組む。15年には国際地理オリンピック大会(ロシア)に選手を引率。今春から県教育庁文化財課。1969年生まれ、浦添市出身。