県立中高一貫校ができたことで、中学受験への関心が増しています。中学受験する? しない? 2回目は子どもに向き、不向きはあるのか、小学校の勉強との関連といった視点から考えます。
向いている子ってどんな子?
うちの子は中学受験に向いている?中学受験に向けた勉強ができる?そんな不安を抱く保護者もいるでしょう。
屋宜塾の屋宜成芳(しげよし)塾長は「受験に向かない子はいない」と断言します。「ただし親の姿勢に向き、不向きはある。例えば、紙嫌いの親、本を読まない家の子は勉強する気にはなりません」と指摘します。さらに「だめという言葉ではなく、修正ができる親、感情的な指導はしない親、根気強い親が優秀な親です」と長年の経験から話します。
ガゼットの松原広喜さんは合格した子の共通点に〈1〉素直〈2〉将来の夢がある〈3〉勉強の習慣がついている―の3つを挙げます。「無理に勉強させられているのではなく、自分のために勉強することが必要という態度の子、成長を楽しむことができる子が合格をつかんでいます」
子どもの発達の視点から琉球大学教育学部の平田幹夫教授は「行ってみたい」という意思表示のある子だけ受験した方がいい、とします。「親の思いが先走るとだめ。いい面とそうでない面の情報をちゃんと与え、最終的には子どもに決めさせること」と子どもの主体性を重んじます。
学校の勉強との関連は?
学校の成績がよければ受験は突破できるのだろうか。「学校の勉強だけでは中学入試の問題は解けません」。屋宜塾長、松原さんは口をそろえます。
「特に私立中の入試は小学校の学習指導要領を超えたレベルの問題が出ます。つまり中学校で習うことを少し先取りして学んで準備しなくてはいけません。幅広い知識、思考力、応用力が問われます」と松原さん。
「県立中の試験は知識だけでなく、知識を活用した総合問題が出題されています。学習指導要領を超えないのが原則なので、問題量が多く、早く正確に読み解くことが求められています。データや資料を読んで理由を記述するといった思考力、表現力、記述力も求められていました」と分析します。
求められている学力とズレも
沖縄国際大学の三村和則教授は「試験に合格する子は1つ先のカリキュラムをこなしているに過ぎない」と話します。
「全国学力テスト」の結果を受けて設けられた「沖縄県検証改善委員会」の委員を務めた三村教授。「小学校で重視されている学力と中学入試で見る学力には、ズレも生じています」と指摘します。
学力は〈1〉知識・理解〈2〉技能・表現力〈3〉思考力・判断力〈4〉関心・意欲・態度―の4つの要素で構成されますが、現在小学校では〈2〉表現力と〈3〉思考力・判断力が重視されています。全国学力テストで「B問題」と呼ばれている分野です。
三村教授は「学力テストでもB問題の評価に時間がかかる。中学入試でB問題の分野(思考力、判断力、表現力)の力を見ることは難しいのでは」と分析。その上で「受験に合格するための勉強が思考力、判断力、表現力の形成の阻害につながる可能性もあります」と話しました。
受験する、しないに関係なく、学力はつけておきたいもの。三村教授は全国学力テストの結果から家庭の経済状況、親の学歴に関係なく成績の良かった子の6つの共通点を教えてくれました。
(1)家庭での学習習慣がついている。
(2)早寝・早起き・朝ご飯の生活習慣が確立している。
(3)親が読書の働きかけをしている。
(4)親が子どもと勉強や成績のことについて話をしている。
(5)親が子に高い学歴を期待し、学校以外の教育投資を行っている。
(6)親が授業参観や運動会など学校行事、PTA行事に参加している。
学習習慣の形成や小学生の学力には学校だけでなく、保護者がどう関わるのか―が中学受験する、しないに関係なく、大事なポイントと言えそうです。3回目(4日公開予定)は子どもの入試を控えている保護者がどんなことを考えているのか、実態をお伝えします。
~この記事を書いた人~
玉城江梨子(たまき・えりこ) 琉球新報style編集部。今年3月までは編集局社会部の記者(=紙の新聞の記者)として医療・福祉や沖縄戦などをテーマに取材。子育て中であることや自身が私立中、高校出身のため、県内で盛り上がる中学受験に興味津々。