サンゴのためにできること しかたにさんちの自然暮らし(8)

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加

 今年は、台風1号の発生が7月と遅かったですね。8月の台風もほとんどが本土に向かいました。沖縄としては、夏休みのイベントや旅行シーズンにはありがたい話です。でも、海の中では困ったことが起きてしまいました。サンゴ礁に白化現象が広がったのです。


夏の暑さを耐えたサンゴ礁(2016年9月 浦添市港川沖)

 白化は、サンゴが生きるのに適した温度以上に、海水温が高いときに起こります。これはいわば、サンゴが熱中症にかかったようなもの。人間の熱中症は脱水症状を起こしますが、サンゴの場合は、体の中にすんでいる褐虫藻という植物プランクトンが体から抜け出してしまう「脱・褐虫藻」が起こります。そうするとサンゴの身が透明になり、中の白い骨格が透けて見えるようになるので、「脱・褐虫藻」の状態を白化と呼びます。高水温による白化は、サンゴだけでなく、褐虫藻と共生しているイソギンチャクやシャコガイなどにも起こります。

 白化したてのサンゴはまだ生きています。でも、これはかなり危険な状態。水温が下がれば褐虫藻も体に戻り、サンゴは生き返ることができますが、高水温が数週間続くと、サンゴは栄養不足に耐えられずに死んでしまいます。今年、特に八重山の海で大規模な白化が起きて、高温に弱い種類のサンゴ群落が大きなダメージを受けました。


高温に弱いサンゴ・ミドリイシは白化(2016年8月 浦添市港川沖)

ソフトコーラルも、褐虫藻の茶色が抜けて真っ黄色(2016年9月 浦添市港川沖)

 台風の波は、海の表面の熱い水と深い方の冷たい水をかき混ぜて、海面の水温を下げます。だから、サンゴが夏の暑さギリギリに耐えて生きている沖縄では、台風はサンゴが生きる自然の仕組みの一部なんです。とはいえ、私たちがサンゴのために台風を呼ぶことも、海の温度を調節することもできません。サンゴのために、私たちにできることはあるでしょうか?


浅瀬の高い水温に耐えるサンゴ、がんばれ!(2016年8月 糸満市大度海岸)

 実は、あります! 最近の研究で、高水温に加えて、赤土や汚染水、バクテリアなどがサンゴを白化しやすくすることが分かってきました。陸の影響がサンゴのストレスを増やし、弱らせているのです。だから、高水温による白化そのものは止められなくても、それ以上サンゴに余計なストレスを与えないようにすることはできます。畑などから赤土や農薬を流さないこと、台所や洗濯、洗車に使う合成洗剤を減らすこと、油などを流さないこと。そして海にごみを流さないこと。ごみもサンゴを傷つけることがあり、いろいろな化学物質が海水中に溶け出す要因にもなります。

 サンゴの海に囲まれ、大昔のサンゴ礁の土台の上で暮らす沖縄。サンゴを守れるのは研究者や専門家ではなく、そこに住んでいる私たち自身なんですね。来年、生き残ったサンゴたちがまた卵を産むでしょう。サンゴの植え付け活動も各地で行われています。そのとき、サンゴの赤ちゃんや、植え付けたサンゴが健康に育つ環境が海の中に整っていなければ、サンゴ礁が回復することはできません。家の排水口や道路の側溝が海につながっていることに気づいて、普段の暮らしを見直すことが、サンゴを守る第1歩になるんじゃないかと思います。



鹿谷麻夕(しかたに自然案内)

 しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京で生まれ育ち、20代半ばで文系から理系に転向、沖縄に来てサンゴ礁を学ぶ。その後、しかたに自然案内を主宰し、県内で海の環境教育を行う。本と音楽と野良猫を好む。



前の記事小林麻央のQOL改善手術「気持ち...
次の記事年収400万世帯は約7万の負担増...