ネットリンチ、参加しない モバプリの知っ得![21]


ネットリンチ、参加しない モバプリの知っ得![21]
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

埼玉県代表の花咲徳栄高校が優勝した夏の甲子園。
県代表の興南高校が和歌山代表・智弁和歌山と激闘の末に破れ、1回戦敗退となったため、沖縄県民的には「短い夏」に感じたかもしれません。

今回の甲子園は、あるプレーを巡りネット上で炎上する事態がありました。
ある試合で、バッターランナーが一塁へ猛ダッシュした際、一塁手の足をわざと蹴って負傷させたのではないか?という疑惑が出てきたのです。

インターネット上では正義感から、選手に、故意のラフプレー疑惑をかけ、「有罪か無罪か」の素人裁判が始まりました。

その結果、選手への誹謗中傷が集まり、「ネットリンチ」となりました。

 

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

今回は、改めてネットリンチを考えてみたいと思います。

「野球のうまい高校生」を追い込む残酷さ

みなさんも、テレビを見ながらその内容について、家族や友人と意見を言い合ったことはないでしょうか?
「この場所行ってみたい!」「この人かわいいよね」と言ったポジティブな意見から、「この芸人、おもしろくない」などのネガティブな意見までさまざまだと思います。

本来、面と向かっては言えないひどい言葉も、画面の向こうのことだから、本人に届かないと思って安心して言うことができる。

こうした無責任で、言いっ放しの言葉を「放言」と呼びます。

特にスポーツのテレビ中継では、試合展開によって観ている側の感情が揺れ動くため、「放言」が発生しやすくなっています。

放言が発生する場所は時代とともに変化し、スマホ時代になった2010年代以降はtwitterやFacebookなどSNSでよく見かけるようになりました。

端末の通信・本体性能が向上し、ネット上に素早く簡単に書き込めるようになりました。またSNSユーザーも増え、多くの人が今見ているテレビの感想を書くことから、一体感が生まれ、スポーツ中継や、大型の生放送番組の際には、ネットのトレンドとして大きなムーブメントになることもあります。

こうした状況のため、甲子園を見て「放言」がネット上で飛び交うことは、ある種仕方がないのかもしれません。

プロのスポーツ選手であれば、責任が伴うので結果によっては批判されることもあるでしょう。

しかしながら冷静に考えたいのは、甲子園は高校生がプレーしているという点です。
甲子園はテレビで中継され、世の中の話題となり、否が応でも注目を集めます。しかし、甲子園に出場している球児たちは「野球のうまい高校生」であり、未成年なのです。

今回炎上となっているのは、バッターランナーが一塁へ猛ダッシュした際、一塁手の足を蹴ったのでは?とされるプレーです。

映像を見ると確かに足は当たっていて、「蹴っている」ようにも見えます。
しかしながら、事故なのか故意なのかは分かりません。

本来、ジャッジが難しいデリケートな事案であるにも関わらず、「わざとやっている!」と断定し、未成年を誹謗中傷することは褒められた行動ではないでしょう。

今はネットで自由に意見を発信することができますが、何か物事を「批判」する場合は、事実関係や妥当性、相手のおかれた状況をきちんと考えた上で行わないと、誰かを強く傷つけ、追い込むことになります。

繰り返されるネットリンチ

ネット上では、多くの人から非難が集まる「炎上」が日常的に行われています。

この連載でも、何度も取り上げています。

「ソーシャルジャスティスウォリアー」って何!?私刑を行うネットユーザーへの警鐘  モバプリの知っ得![15]

「炎上」と「ネットリンチ」 加害者・被害者にならないために モバプリの知っ得![18]

有名人になら何を言っても大丈夫? 考えたいSNSマナー モバプリの知っ得![19]

(自分の考える)正義感で、誰かを叩くことを「ソーシャルジャスティスウォリアー」「私刑」「ネットリンチ」とさまざまな言葉で表現してき的したが、根っこの部分は全て同じで、「相手に非があるなら何をしてもいい」という考え方です。

しかしながら、世の中は「100%善」「100%悪」など明確に切り分けられることは少なく、さまざまな出来事様存在し、グレー決着となることも多々あります。

こうした背景を想像し、意見を出さないと誰しもがすぐに炎上する窮屈な世界になってしまいます。

そうすると、回り回って自分自信や、大切な人がターゲットに遭い、追い込まれる可能性も十分あります。

意見を言うこと、批判をすることは大事なプロセスではありますが、妥当性をきちんと考えた上で発信していきたいものです。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」9月3日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/