ハブのいる島、いない島の差って? 沖縄県民とハブの深い関係とは?

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那覇市の北西約60キロにある人口約700人の粟国島。これまで「ハブのいない島」と言われてきたが、今年9月に1匹、10月にまた1匹。そして11月24日には3匹目が発見された。沖縄県は島内に捕獲器を設置してハブが定着したかどうかを調査している。

ハブいない島のはずが…粟国で3匹目
沖縄県、来月以降に定着か判断

でも、そもそも沖縄全域にハブがいるんじゃないの?
ハブのいる島、いない島ってどう見分けるの?と思った人も少なくないのでは?


ハブはどこにいる?


沖縄の陸上には22種類のヘビが住んでいて、そのほとんどが琉球列島だけに住む貴重なヘビ。そのうち毒を持つヘビは8種類で、特に危険なのはハブ・ヒメハブ・サキシマハブ・タイワンハブの4種類。ここではこの4種をまとめて「ハブ類」と呼ぶ。


ハブ(沖縄県衛生環境研究所提供)

ヒメハブ(沖縄県衛生環境研究所提供)


サキシマハブ(沖縄県衛生環境研究所提供)

特定外来生物のタイワンハブ(沖縄県衛生環境研究所提供)

沖縄には有人島が49島、無人島が111島ある。ハブ類が生息していない主な島は宮古島、南大東島、北大東島、与那国島、久高島などだ。

ハブ類のいる島といない島の差は何か?なぜいる島といない島があるのか?
「ハブのいる島といない島は一つおきになっている」と聞いたこともあるが、本当のところはどうなのか?
まずは沖縄県衛生薬務課に聞いてみた。

「地図を見てもらえれば一目歴然ですが、ハブ類のいる島とない島は一つ置きではありません。規則性はありません。なぜいる島といない島があるのか、はっきりした理由は分からないんです」と沖縄県衛生薬務課の担当者。


2017年12月7日、地図を修正。鳩間島を追記しました。

「ただし、有力な言い伝えが一つあります。ハブ類の祖先は琉球列島が大陸と陸続きだった数百万年前にやってきたと言われています。海水面の上昇と下降を経ていくつかの島ができましたが、このとき水没した島ではハブ類が絶滅し、ハブ類のいない島ができたというものです。でもあくまで言い伝えで、証明されているわけではありません」

は虫類に詳しい沖縄生物倶楽部の佐藤寛之さんにも同じ質問をしてみた。
佐藤さんは「粟国島にもどこかの段階ではハブがいただろう。長い長い歴史の中で気候変動、地殻変動などの影響で絶滅した」とみる。その上で「集団で死んでしまうと復活しない。生態系はその島の履歴書みたいなもの。島の成り立ちの生き証人」と生態系からその島のたどってきた歴史を見るおもしろさも説明してくれた。

ところで、粟国島で見つかったハブ。定着しているかの判断はどうするのだろうか。基準はあるのだろうか。沖縄県の担当者は「実はその基準はないんです」と苦笑い。数年前に宮古島の港でハブが1匹見つかったことがあるが、その後ハブが見つかることもなかった。「今回のようにハブがいないとされていた島で相次いでハブが発見されるということはなくて、手探りです」と困惑した様子だ。

ハブ類のいなかった島にハブ類が定着したという例はないものの、もともと八重山諸島にしかいなかったサキシマハブが沖縄本島に持ち込まれ定着している。外来種のタイワンハブも沖縄県内に生息している。佐藤さんは「これらは意図的に大量に持ち込まれた結果。今回は大量に持ち込まれたわけではなく、資材に紛れ込んでいたようなので、繁殖して定着は難しいのでは」と推測する。

過去には死亡例も、今は亡くなる人はいない。
変わる沖縄県民とハブの関係

沖縄県はハブの活動が活発になり、人間も行楽シーズンを迎える毎年5月、「ハブ咬傷注意報」を出している。

沖縄県がハブ注意報発令 楽しい休みも油断禁物l

動画でもハブについて解説。ハブの特徴、どんな時にハブに咬まれるか、ハブに咬まれた時の対処法などを普及、啓発している。

(動画)「ハブに注意!被害対策で安心生活」


2000年以降、沖縄県内ではハブに咬まれて亡くなったという例はないが、復帰前には年に400件前後の咬傷被害があり、数人が死亡していた。現在でも年に40件程度の咬傷被害が報告されている。

2016年に市町村が住民からの通報などで駆除したハブは約4000匹。山道だけでなく、那覇市など都市部でも発見、駆除されている。県の担当者は「ハブはネズミを好んで食べるので、ネズミがいる所にはハブもいると考えてください」と注意を促す。

猛毒のハブだが、沖縄の生態系のトップに近いところにいると見られ、大事な生物でもある。

ハブを泡盛につけた「ハブ酒」もお土産としてすっかり定着している。
「ハブ酒」を製造しているおきなわワールド南都酒造所ではハブへの感謝の思いを込め、1982年から「ハブ供養祭」を催している。


ハブに感謝し、供養する住職=2017年8月、南城市おきなわワールド文化王国・玉泉洞内のハブ博物公園

ハブに感謝し供養祭 南都酒造所職員らが焼香

 

南風原町のyu-i FACTORYでは駆除されたハブの革を使って財布や名刺入れなども作っている。おしゃれで日常使いできそうな商品だ。


沖縄初の県産ハブ革を使った商品を製造するyu−i FACTORYの幸地賢尚さん=2016年12月、南風原町のyu−i FACTORY

県産ハブ、クールに 革製品の「ユーイファクトリー」

 

しかたに自然案内の鹿谷麻夕さんは「ハブは沖縄の生態系のてっぺんに近いところにいるだろう。ハブのいる島ではハブを恐れながら一緒に暮らしてきた。沖縄にとってハブとは自然に対する敬意、畏怖の象徴的な存在」と話す。

一方、佐藤さんは「ハブは怖いと都市部の人はおびえるが、それは生態を知らないから。今は医療体制も確立され、死亡例もない。そろそろおどろおどろしいハブ観を変えるときに来ているのでは。生き物がそこにいる意味、この島に生まれて育つということをいい面も悪い面も含めて飲み込むことが大事では」と投げかける。

日本の中でも奄美諸島を含む琉球列島にしか生息しないハブ。猛毒だが、沖縄の自然環境に必要な存在。そんなハブたちと私たちは共存していかないといけない。むやみやたらに恐れるのではなく、ハブの生態を知り「正しく恐れる」ということ。人や物の移動と外来種の侵入というテーマをハブが教えてくれているのかもしれない。



~ この記事を書いた人 ~


 玉城江梨子(たまき・えりこ) 琉球新報Style編集部。琉球新報の記者として10年余り沖縄各地を取材。沖縄の本当の良さを全国の人に届けたいと思っています。

 




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