#MeToo とウーマンラッシュアワーから考える師走in 2017年 来年はあなたも「沈黙を破る人」に?(上)

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アメリカから見た! 沖縄ZAHAHAレポート(5)


 あっという間に、2017年も残りわずか。今年はみなさんにとって、どんな年だったでしょうか? 米タイム誌は12月、その年を象徴する人を選ぶ毎年恒例の「今年の人(Person of the Year)」に、性的嫌がらせや性暴力を告発した人を選び、「The Silence Breakers(沈黙を破った人たち)」と名付けました。


2017年の「今年の人」米タイム誌の表紙

 表紙には、ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏のセクハラ疑惑を実名で告発した女優アシュレイ・ジャッド氏をはじめ、自分の尻をつかんだ元ラジオDJに対する民事訴訟に勝訴した人気歌手テイラー・スウィフト氏、米国の果樹園でイチゴを摘む仕事に就いていたイサベル・パスカル氏(仮名)、カリフォルニア州の企業ロビイスト、アダマ・イウ氏、配車アプリ「UBER」の最高経営責任者を退任に追い込んだ元エンジニアのスーザン・ファウラー氏が表紙に並んでいます。
 


タイム誌の2017年「今年の人」2位~7位の面々。2位はトランプ米大統領(The Agitator=扇動者)、3位は習近平中国国家主席=The Chairman=議長)、4位は米大統領選へのロシア干渉疑惑を捜査しているロバート・モラー特別検察官(The Enforcer=法の執行者)、5位は金正恩朝鮮労働党委員長(The Threat=脅威)、6位は人種差別に抗議して国歌斉唱の際に片膝をついたプロフットボールNFLの選手コリン・キャパニック氏(The Idealist=理想家)、7位は映画「ワンダーウーマン」の監督、パティ・ジェンキンス氏(The Trailblazer=先駆者)でした。

「セクハラ」「性暴力」がまん延する社会

 タイム誌では、今年に入り、セクシャル・ハラスメントについて声を挙げた61人(大半は女性)の顔写真を時系列で紹介しています。そこには、ホテルで働く女性、起業家、海兵隊員、大学教授、活動家、女優、議員、ジャーナリストなどが名を連ねています。インタビュー記事などに30ページ余りを割き、いかにさまざまな職業、立場の女性たちが被害を受けてきたか、そして、勇気ある行動を起こした女性たちに賛同し、ソーシャルメディアで「#MeToo(私も)」と、被害を訴える大きなうねりが起きたかなどを伝えています。



 タイムのウェブ版では、インタビュー動画を交え、トランプ氏の大統領就任式翌日の1月21日に、ワシントンD.C.をはじめ世界各地で行われた女性の権利を訴えるデモ「ウィメンズ・マーチ(Women's March)」を起点に、この1年で女性たちの告発、行動がいかに大きなムーブメントになってきたかを分かりやすく紹介しています。
 

タイムのウェブ動画(クリックで動画ページへ)
 

 師走に入っても、アメリカ国内のセクハラ問題はまだまだ続いています。議員による議会スタッフへのセクハラ問題などが指摘されていた米連邦議会では、民主、共和両党の議員3人がセクハラ行為を認め、辞職を表明しました。著名なシェフやジャーナリストなども被害者からの訴えを受け、謝罪したり、番組を降板したりと、政治やメディア界の権力者が相次いで自身の行為を認め、責任が追及されています。

 これは、長年ずっと起こり続けていた問題が勇気ある告発で表面化したということで、被害はあくまで氷山の一角。力関係を利用したセクハラや性暴力が長年、いかに社会全体にまん延してきたか、今もどれだけ多くの人が被害に苦しんでいるかを示しているのだと思います。

 被害が起こるのは、女性や子どもたち、一部の男性が、上司/部下の関係、指導者/選手・生徒の関係、仕事での顧客や取引先との関係、などなど、力の強い側が弱い側を抑圧する関係性によるものが多い。そして、被害を受けた側は、職を失うかもしれない、報復が怖い、自分が悪かったのかもしれない、周りから非難されるかもしれないと、声を出せずにいる(いた)ということ。加害者側の認識が引く中で起こり続けている問題。被害を受けている側、立場の弱い側が声を挙げない限りは、残念ながら社会は変わらないということでしょう。
 

日本はいったいどうなっている?

 翻って、日本はどうでしょうか?レイプ被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんをはじめ、最近では、作家・ブロガーのはあちゅうさんも電通時代のセクハラ被害をバズフィードの記事で訴えました。

 そこで目にするのは、被害に対して「こんなのおかしい」「私もこんな被害に遭った」という賛同や連帯の声の一方、女性にも非があったのだろうと被害者を責める心ない声や、加害者を非難しつつも全く当事者意識のない男性のコメントがウェブの記事やツイッターであふれる現状です。そして、こういった問題を日本の大手メディアはなかなか取り上げません。女性の勇気ある告発を後押ししたアメリカのメディアとの違いを強く感じると共に、その背景に大きく2つの違いがあると考えます。


◇BuzzFeed Japanに掲載された告発記事はコチラ
はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」
 

 #MeTooの動きが起こってから、日本人の友人(女性)は、職場の同僚(アメリカ人男性)に、「僕は今まであなたにセクハラや嫌なことをしていなかったか? もし、していたら本当に申し訳ない。僕が嫌なことをしていたらぜひ教えてほしい」と言われたそう。

 私もこの話題を知人のアメリカ人男性と話した時、「昔、自分が苦しいときに助けてくれた友達が、実は酒に酔って知人の女性にセクハラを繰り返していた。僕は後で知ったが、友達に『やめろ』と言えなかった。自分の行動を変えるべきだったと思う」と話してくれました。

 セクハラは、圧倒的に男性から女性に対しての加害が多い。「女性の問題」と押し込めるのでなく、加害者側になり得る男性同士が話さなければならない問題だと思うのです。こうやって「自分」に置き換えて、「当事者として考える」ことのできる男性が増えなければ、いくら女性が告発しても問題は解決しない。

 でも、少なくとも私は、こういった見方をしている日本人男性にまだ出会っていません。この話題になると、「女性から男性に対してのセクハラもある」「男性は何もかも『セクハラ』だと訴えられて、びくびくして過ごすしかない」といった「問題をすり替える」反応はよく受けましたが。

 もう一つは、「こんなのおかしい」と政治や社会問題に声を挙げる人をたたく風潮が日本は根強いということ。アメリカは、人と違うこと、「Make a difference」に価値を置く文化。一方の日本はどうでしょうか。2016年7月、安冨歩さん(東京大学東洋文化研究所教授)に初めてお会いし、安倍政権やネトウヨ、米軍基地問題などから「同調圧力」についてお話を伺った時の言葉を思い出しました。

―同調圧力、違う物を排除しようという動きの原点は、何でしょうか?

 「自分」が何者であるか分からなくなった人間は、他人をイミテートするしかないので、イミテーションをみんながやると「同調」するんです。誰かと同じようにしようとすると何かにそろう。そろっていない人は、自分たちと同じように作動していないで生きている「危険な生き物」だから排除する、ということ。同調圧力というのは、ある「特定のモードに従う」ことを要求しているのではないんですよ。「何かに従うこと」を要求している。
 

ありのまま生きる 安冨歩さん(東京大東洋文化研究所教授)


 同調圧力や「加害側」に立つのは、既得権益にしがみつく人や、変化を望まない人、自分の立場を脅かされたくない人だと感じます。セクハラや性暴力の問題についていうと、日本に根強く残る性的役割、家父長制、女性を「活用」しようという上から目線の政策、ミソジニー(女嫌い)、そして自身も社会や権力から踏みにじられているが故に、誰かをまた踏みにじるという「いじめ」のような連鎖―があるのではないでしょうか。

 いろんなことが絡み合った中で、どの「立場」から、物事が語られ、異議を唱えることを許されない風潮ができあがっているのか、「おかしい」と声を挙げる人の口を封じようとする誰が「得」をしているのか、私たちは注意深く見て、考えなければならないと思うのです。

 



 座波幸代(ざは・ゆきよ)  政経部経済担当、社会部、教育に新聞を活用するNIE推進室、琉球新報Style編集部をへて、2017年4月からワシントン特派員。女性の視点から見る社会やダイバーシティーに興味があります。

 



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